囚われの罪人
□幕開け
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ズズ――――――――――
ゴゴゴゴゴ―――――――
ズウウウン!!
その日、トキワシティを地震が襲った。
幸い被害は少なく、怪我人すらいなかった。
………少なくとも、その時ばかりは、助かった。
……………しかし、これが大きな悲劇の幕開けになろうとは、誰が予想できただろうか。
「ふぅ…やっと収まったあ……」
トキワシティの民家の一つから、少女がでてきた。
その少女は、まだ9、10歳で、綺麗な金髪をしていた。
少女は、地震が止んだことに少し安心したが、すぐに不安そうな顔になった。
「…あの人、無事かな……」
トキワの森で自分を助けてくれた、赤い少年を思い浮べる。
彼がトキワジムに向かっていったのは、ついさっきのことだ。
しかし。
地震の震源は明らかにジムの方だ。
まさか、彼は………
少女は、自分の考えを、首をふって打ち消した。
彼なら大丈夫。
そう信じていた。
「ぐっ……………」
今、地震で崩壊したトキワジムの近くに、二人の人影があった。
一人は、周りにポケモンを従え、地面に蹲るもう一人を見据えていた。
もう一人は、まだ若い少年。あちこちに傷を負い、背中は服が裂け、そこから血が流れているほど重症を追っている。
少年のほうは、その怪我以外にも何か大きな理由があり、今にも力尽きそうになっていた。
もう一人のほう…男性は、その少年が気を失うのを見届けてから、少年をそっと抱え、どこかに飛んでいった。
去りぎわに言葉を残しながら…
「我がロケット団は復活する!」
そこには、大勢の観客と、向かい合う二人…少年と少女がいた。
少年と少女の戦いはますます激しくなり、それに呼応するかのように観客たちの歓声も大きくなっていく。
ただ、少年も少女も、心ここにあらずといったようだった。
少年のリザードンの火炎放射と、少女のカメックスのハイドロポンプがぶつかり、煙が舞う。
そして、煙が晴れると……
『優勝者は…!マサラタウンのグリーン選手!』
少年のリザードンがなんとか踏み止まり、少年…グリーンの優勝になった。
ただ、グリーンはあまり嬉しそうではなかった。
それは負けた少女も同じだった。
少女…ブルーの顔には、悔しさも悲しさもなく、ただ心配そうな表情が表れていた。
リーグの表彰式が終わり、長かったリーグが終わると、ブルーはグリーンのもとに走ってきた。
「グリーン!」
「ブルー…」
二人とも、さっきまでとは違い、心配で心配で堪らないような顔になっていた。
「…ヤツはいたか?」
「…いいえ。いなかったわ」
「……ヤツにしては珍しく予選落ちしたと思ったのだが…」
「予選にさえ出ていなかった」
彼らが探しているのは、とある一人の少年。
彼らと共にロケット団と戦い、ポケモンリーグで再会することを誓い、そして急に行方不明になった少年だった。
「アイツがもし無事ならリーグに出ないワケがないわ」
「やはり、ヤツは……」
グリーンのその言葉で、ブルーの表情が曇る。
そんな彼らに、オーキド博士からの呼び出しがかかった。