斎平
最近晴れが続いている。
巡邏の最中にのんびり思うほどだ。
暇を弄ぶ。
最近浪士共も目立った騒ぎを起こさない。
澄んだ青空を眺めながら、
藤堂は息をついた。
京は美しい。
ただ、その美しさを、
もしや汚してはいないだろうか。
血を見る度、思った。
その癖刀を振るっているときは無心だ。
寧ろ、気持ちは高ぶり、
自分でも制御できなくなる。
日が真上を過ぎたのを確認して、
隊士たちを先に屯所へ戻した。
まだ、帰りたくなかった。
近くの団子屋に腰を据え、
ゆったりとした時間を過ごす。
何をするでもなく、ただ、そこにいた。
男が自分に近づいてきて、
自分のすぐそばで立ち止まった。
「随分とのんびりしているなあ」
斎藤だ。
言われた言葉を巡らせ、
初めて日が傾いているのに気づく。
「永倉たちが心配していたぞ」
でも、来たのはこの男。
「そうか、わざわざ悪かったな」
私がこの男を好いていないことを分かって寄越したのだろうか。
あまりいい気分で無かったが、
ようやく腰を上げたとき、
「別に、俺は骨董屋の帰りなわけであってお前を迎えに来たわけではない。お前の帰りが遅かろうと構わん」
眉を寄せ、不思議そうに言うのだ。
この、人の神経を平気で逆撫でするこの男の気が知れない。
こいつとはもう口を聞かないといつもいつも決めているのに、
自分は相当頭が悪いらしい。
こうして腹を立てて、
再び決心するのだ。
「そうか、」
出来るだけ落ち着いて、言葉を紡いだ。
これ以上その場にいると自分でも抑えきれないと踏んだので、
斎藤の横を抜けて屯所へ足を向けた。
すると、どうだ、
「藤堂」
その、いつもの抑揚のない声が他でもない自分を呼ぶ。
何だ、本当になにを考えているか分からない。
振り向くと、また不思議そうに、
「どうせ帰る場所は同じなんだ。もう少し俺に合わせろよ」
歩調を、ということだろう。
あれこれ考えを巡らしても、
この男には適わないと知る。
何故ならこいつの中に好き嫌いの感情は存在せず、
ただ、斬るべき者かそうでない者かだけなのだ。
普通の考えなど、通用するわけもない。
ゆったりと橋を渡りながら、
沈む太陽を見ていた。
明日も晴れるか、
広がる夕焼けに息をついた。