青き春

□強さ
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人の死というものは、なんと恐ろしく儚いものだろうか。
そう思ったのは初めて人を斬ったとき以来。
ほとんど久しぶりだった。

同士だったものの塊を眺めながら、刀を持つ手に力が入ったのが分かる。
夢に見そうなその姿。
涙さえ出なかった。






最近一人でいるのをよく見かける。
そう思いながら総司は団子を咀嚼。
原因は大体見当がつくのだが、どうだか、この人はそんなに脆い人間だっただろうか。

「永倉さん」

呼びかける声が少し震えたのには自分でも驚いた。気づかないふりをした。
振り返る永倉はいつもと同じに見えた。
何があっても感情を露わにしない。
冷静で怖じ気ない精神を持つ男。

沖田はそのまま、永倉の横に腰を据えて、最後の一つを飲み込んだ。
お前、俺の分は。
知りませんよ、人のなんか。

相手が腹を立てるのを感じながら、沖田は笑う。
こいつの笑顔はどうしてこんなに呑気なのだろう。
肩の力が抜け、無意識に気を張っていたことに気づいた。


調子がいいのだろうか、今日は。
それでもやはり青い顔で、俺の心配をする。


「何の用だよ?」


返ってきたのは「いや、特に用はないけど」という予想通りの返事だったが、前に向き直って吐いたため息は先ほどのとは理由が違った。

俺だってお前の答えにゃ期待してねぇわ。






どうして命には終わりがあるのだろうか。
生きることに疑問を抱く子供のように、それは自然と俺の中を巡った。

どうしてあんなに汚くなってしまうのだろうか。
そろそろ思い出せなくなっていく。
脳が勝手に消していく。
赤黒く染まったあいつを、闇が包む。





「俺は生きてますよ」


隣でつぶやく声を聞いた。
彼自身、もう闇が迫っているというのに。


永倉は笑った。
らしくないとくだらない考えを吹き飛ばしたくて。

隣りで生きる命を感じて一人、泣きたい気持ちになった。







油小路後


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