parallel

□新年会
1ページ/1ページ



「龍峰、こっちだ」



聖闘士星矢Ωの主要メンバーが集まる新年会。


袴に身を包んだ龍峰が会場を訪れると、既に栄斗が席に落ち着いていた。



「あ、龍峰!みんな袴だと、ヘンな感じだな!」



そして、そわそわと落ち着かない光牙が、部屋の中の装飾品を見て回っていた。


今日の新年会は今年に入って最初の撮影後に行われるため、正月らしく和服で集合しようと皆で取り決めた。


出番の終わった順に着付けてもらい、着々と面子が集まりつつある、という状況だ。



「栄斗はやっぱり和服似合うね。カッコいいよ」


「べ…別に、お前に誉められても…」



ツンと顔を逸らす栄斗の隣に腰を下ろすと、袖を強く引かれた。



「なぁなぁ、龍峰オレは?」



龍峰にかまってもらいたい光牙は、子犬のようにじゃれつく。



「光牙くんも、よく似合ってるよ」



優しい笑顔で誉め言葉が返ると、幼さを残す光牙は満足そうに笑った。


そんな光牙の肩に、褐色の逞しい腕が回される。



「ぐぇっ!」


「なぁ、俺似合うだろ〜。これで外歩いたら女の子にモテるかな?」


「蒼摩」



ウインクと爽やかな笑顔を携えた彼は、日本風をアピールするように、扇子で自らの顔を扇いだ。


そして、さりげなく座布団の上に扇子を置き、龍峰の隣を確保した。


「うるせー!蒼摩は落語家っぽいんだよっ」

「何だと〜?光牙なんて七五三じゃねーか!」


締まる腕を振り解いた光牙は、現れた蒼摩にさっそく食ってかかる。


いつもと変わらぬ兄弟のような2人に思わず龍峰の苦笑が零れた。

栄斗はこのじゃれ合いを呆れたように傍観する。

光牙も栄斗も一応同じ13歳なのに、周囲には随分な隔たりを感じさせた。


「おいエデン!何だその格好!」


蒼摩のすっとんきょうな声が響く。


大きな声に驚いて、皆がそちらに視線を向けると、最後に到着したエデンが蝶ネクタイをあしらったスーツ姿で蒼摩と対峙していた。


「今日はみんな日本の正装で揃えるって言っただろ?!」


「ボクの家での正装はコレと決まっている。何かおかしいか?」



まるでこれが当然のことと言うように周りを見回す。



「まぁ、いいよ…。とりあえずみんな座ろうぜ」


「ちょっと待て。空気の読めない連中と食事などできん。龍峰、こっちに来てくれ」


「え、僕?」


「おい、エデンだけには空気読めないって言われたくねえよ!」


「エデンだけ龍峰の隣取るなんてズルいぞ!オレも龍峰の隣がいい」



エデンのワガママが光牙の末っ子体質を刺激して、2人して「龍峰の隣に座りたい」という願望を押し通そうとした。



「全く、お前ら本当にしょうがねえなぁ。蒼摩兄ちゃんが仕切ってやるか!」



放っておくといつまでも揉めそうな2人の間に、年上ぶる癖のある蒼摩が仲裁を買って出た。



「はいはい、13歳組は奥側に固まって。光牙とエデンは龍峰の隣で栄斗が向かいな。これで文句ないだろ」


「龍峰の隣ならそれでいいぜ」


「…オレは別に」


「仕方ない。ボクは年長者だからその案に乗ってやろう」


「じゃあ各自席移動な。おしぼりとお茶ぐらいは持って動けよ〜」


なんとか収まったワガママ合戦に、龍峰は安堵の息を漏らす。


扇子を拾うため屈み込んだ蒼摩が、そっと龍峰の耳元で囁いた。

「龍峰」


「ん?」



返事をした直後、するりと龍峰の内股の間に滑り込んだ手が、袴の上から撫で上げた。



「ひぁっ」


「今年もヨロシク、な?」



龍峰の声に、蒼摩は満足げにいやらしく笑って席を立った。



「蒼摩…っ」



仲間の目がある場での接触を小声で咎めたが、蒼摩はチラッと龍峰を見やるだけだ。



「ん…。龍峰、どうかしたのか?」



おまけに、2人の間に流れる異変を光牙に気づかれてしまった。



「な、何でもないよっ。大丈夫!」


「そっか。今お前の隣行くからな」



焦りを含んだ否定に、光牙はそれ以上追及しなかった。


席を移るために飲み物とおしぼりを片付ける姿を見ながら小さく息をつく。



「…っ、もう…」



触れられた太股が熱い。


手のひらの感覚を取り除くようにゴシゴシこすっていると、耳元で囁かれた。



「…今年も大変そうだな」


「〜…!」



蒼摩のせいで途端に敏感になった身体。


吹き込まれた息に、背中の奥がぞくりとざわめく。



「は、栄斗…っ」


「新年早々、お前たちが見せつけるからだ」


低い声の主は、面白そうに笑みを浮かべた栄斗。


囁いた次の瞬間、素早い彼はすました顔で席を立っていた。



「…見せつけてなんて、ないよ…」


「なー、龍峰。これ何かな?すげえ美味そう!」


小さい呟きが栄斗に届いたか確認するより先に、龍峰の隣を陣取った光牙が無邪気に話し掛ける。


「あ、うん。そうだね、美味しそう」


光牙の言葉を上の空で聞き流して、彼の向こうの蒼摩に視線を向けた。


蒼摩は先程のことがなかったかのように、店の女性従業員に話し掛けている。

こんなに彼のことを意識してしまうのは自分だけなのか。


そう思うと少し悔しい。


帰り道、「今日は帰りたくない」と彼を困らせてみようか。


呑気に笑う蒼摩を焦らせたくて、龍峰は新年会の間中、思索を巡らせたのだった。







拍手からリクエストいただいたのは、「蒼龍ベースの龍峰総受けギャグで、Ωの忘年会」でした。

もう1月も半ばなので、新年会設定で書きました。

分かりにくいですが、Ωの撮影後のみんな、みたいな感じです。

あの、前に書いた現パロみたいなイメージで読んでいただけるとよいかと。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ