※注意!死別ネタです。 (時間軸:Ζ3/Ζ1前回想)
◆Retrospect1_Elf War
「「「ゼロ、きみならできる、きみなら‥‥」」」
<シーン1> 星のカケラが降り積もるような、静かで澄んだ音がする。 あたりは漆黒の闇に満ちている。 だんだん深くなる。
Χ 星から生まれたいのちの輝き。人を模してつくられた機械の叫び。思想のちがいからめばえる争いの炎。‥‥ここには、もう、届かない。
小さく息をつく。
Χ 電脳の深淵へとけていく意識の底から浮かんでくる光景は、‥‥ゼロ、きみとともにたたかった、百年前の戦場の記憶。
Χ 聴こえてくるのは、きみが百年前に残してくれた、‥‥さいごの、ことば。
<シーン2> 巨大な建造物が崩壊する轟音。 爆発音。爆撃音。 あたりは炎につつまれている。
Χ 僕は、僕たちは、誰かを縛りつけるために戦っているんじゃない、誰かを傷つけるために戦っているんじゃない! ただ、誰とでも手をつなぎあわせられる世界をつくりたいんだ!!
Ζ オメガ‥‥もう一人の俺と戦って、やっとわかった。今までの俺がどんな戦いをしてきたのか、今までの俺の迷いがいったい何だったのか。‥‥今なら言える。俺の力は破壊するためのものじゃない! 友と、友の信じるものを守るための力だ!!
Ζ [セイバーふるう掛け声]セェイ!ハッ!トウッ!!
Ζ 消え去れ。俺の悪夢よ!
Χ さよなら、僕の宿命‥‥
「「ファイナル・ストラ―――イク!!!」」
<シーン3>
『感覚器系、切断。‥‥封印作業、最終視野ニ入リます』
二つの足音が研究施設の廊下に響く。 ひとつは焦ったような早足で、もうひとつはそれを追っている。 焦った早足は、最後はほとんど駆け足になっていた。
科学者 「もう時間がありません。すでに機能停止が始まっているので、満足な会話など出来るかどうか。」
エックス、ポッドに駆け寄る。
Χ 「ゼロ‥‥ッ。」
Ζ 「‥‥‥‥‥‥え‥‥‥‥くす‥‥か。‥‥‥‥‥‥」
Χ 「!!!」
Χ、衝撃に息を呑む。 呼吸音が激しく乱れ、泣きそうになっている。 対し、Ζはあくまで静かだった。 ‥‥否、もはや静止しつつあるのだろう。
Χ 「きみは、これでいいのかい! 今までみんなのために、戦ってきたというのに!! こんなのって‥‥!」
Ζ 「‥‥俺がいるかぎり、血塗られた歴史は、くりかえされる。」
Χ 「そんな‥‥っ、なに言ってるんだゼロッッ!」
しかし、Ζは静かに語りつづける。 せわしない電子音と機械音が、どこか遠くから響いていた。
Ζ 「おれは、いつも、かんがえていた。‥‥だれのために。 なんのために、おれたちレプリロイドは、ころしあわねば、ならないのかと。」
ことばを出力する力すら、Ζにはほとんど残っていない。 Χは息を詰めてΖの声に集中する。
Ζ 「そんなときでも、おまえは、ニンゲンたちを、しんじつづけていた。」
Χ 「‥‥‥‥」
Ζ 「おれは、ともとして、‥‥おまえを、しんじている。」
Ζ 「だから、おまえのしんじるニンゲンたちのことばを‥‥」
『最終 かウント・ダウン。』
Ζ 「‥‥しんじたい。」
語尾は構内に響いた合成音にかき消され、ほとんど聞こえないほどだった。 Χはなすすべもなく立ちつくしている。 しかしその間にも刻一刻とカウントダウンは進んでいく。 Χは、‥‥もう耐えられなかった。
Χ 「やめろォ‥‥」
身を引き裂かれたかのようにΧが叫ぶ、
Χ 「(絶叫)今すぐ封印をやめてくれえええッ!!!」
しかし、その叫びが聞き届けられることはない。 Ζだけが、静かに微笑した。
『‥‥3、』
Ζ 「いいんだ‥‥」
『‥‥2、‥‥1、』
Ζ 「あとを‥‥‥‥たの、む」
『 0 』
Χ 「!!!」
地球が潰れたような音がして。
――すべては、閉ざされた。
Retrospect1_Elf War -end-
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