ブック(長編)
□shine
第一訓 今はただ愛おしいから
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こうなることは分かってたと思う…
ただ俺は臆病だから
分かっていて見てない振りをしてたんだ
今日も決まって一人でフラリと吉原にやって来た
女を買う金はないのでタダ酒を飲むのとついでに…
いや、こっちが真の目的の
俺のお月様を拝みに「ひのや」の暖簾をくぐる
「じゃまするぞー」
「あら銀さんいらっしゃい!」
元吉原一の花魁であり、現在一児の母である日輪が汚れることのない笑顔で出迎えてくれた
「ごめんなさい、月詠まだ帰ってきてないのよ」
「別にいいって、それより酒一本!」
「何が別にいいってよ、ホントに銀さんも素直じゃないね〜」
「ほっとけぇ」
内心少しガッカリしながらも気づかれぬよう酒を飲む
そうして半刻ほど過ぎたであろうか…
待ちわびたお月様が帰ってきた
いつ見てもこの女に見とれてしまう自分がいる
透き通るような白い肌、細くしまった手足、出る所と締まる所がこれでもかというバランスの肢体
そして何より傷がついてることすらマイナスにはならない美しい顔
どれをとってもいつも自分や男を煽る材料にしかならないと思ってしまう