雪の護廷十三隊〔二〕
□崩れゆくものの行方
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「お邪魔しまぁ〜す♪」
浦原は大口を開けてそう言うと、四楓院家のとある部屋の奥へ奥へと踏み入った。
へえー、ほお〜、と感嘆の声は途切れることがない。
しかし一見しただけで、それがどんな物なのかを判断できる浦原は大したものだ。
「どうじゃ?凄いじゃろう」
腕を組んだ夜一が得意げに感想を聞いても、浦原は「ええ、そりゃあもう♪」と言うだけで目はあらゆる武具から外れない。
「…あれ?夜一さん…。これは何ですか?」
ガラスの箱に入れられた、触ってもいないのに微かに動いている物を見つけた。
「ああ…崩れ玉か」
壁に凭れていた夜一も近くまで歩み寄ると、箱を手にし中からその流動体を取り出して浦原に渡した。
「…ほれ、玉になろうとしておるじゃろ?じゃが玉になれん。だから崩れ玉と呼んでおるのじゃ」
「…で。これはどんな武器なんです?」
「武器、のう…」
暫く思案した夜一は、わからんと言い切った。
「わからないって…。コレ、夜一さんのモノなんスよね?」
「まーのぅー。新しい武具を創り出しておる最中にできた…というか、出てきたそうじゃからの。しかし何故か此奴だけは、能力も形状もはっきりせんのだ。ただこれの創り主が言うには尸魂界に必要じゃからこそ、生まれた物じゃろうから預かってくれと言われてな」
「つまり…形状が安定すれば能力もわかるかもしれない、と?」
「そうかもしれんのう。どうじゃ…お主、やってみるか?」
「ここから持ち出しても構わないんスか?」
「かまわん。このままでは何ともしようがないことに変わりはないからの。それにもう随分長い間忘れておったのを、お主が手にして思い出した。これも何かの縁じゃろう」
「この崩れ玉、きっと凄いっすよ。いやぁ夜一さん、感謝しますぅ♪」
「名前も適当に呼んでいるだけじゃ。能力がわかったら、お主がつけて良いからの」
この形を為さぬ物が尸魂界に二つあり、それが後に
瀞霊廷――
尸魂界―――
そして現世をも巻き込み――――
この二人だけでなく多くの者の運命をも大きく動かすことになろうとは……
この時誰も、想像だにしなかった。
fin*