‡蒼色の扉‡(Main)

□未来からの手紙[前編]
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…お前はずるいな



…オレが?何故だ



…自分の胸に聞いてみろよ


…何の事だ



…おまえを許さない








時を刻み進める柱時計の音。


夢を見ていたのか


座ったまま壁にもたれ掛かる様にして眠っていた。

不思議と夢で聞いた声だけが、鮮明に頭に残る。



ふと柱時計に目をやると、時刻は12時を指していた。


スタンドライトの灯りだけがぼんやりと見える。


クローゼットから着替えを取り出したオレは、ベットに置くと着替えを始める。



ジーンズに脚を通し、着慣れた黒のタンクトップの上から、薄手の白いシャツに袖を通す。



『夜は冷えるな…』



多少肌寒さを感じながらも、鏡の前に立った。


手ぐしで髪を整え、目の前の自分と向き合うと、荷の入ったリュックを肩にかけ、再会の楽しみを胸に部屋を後にした。




廊下を進む途中、母親の寝室のドアを静かに開け、寝静まる母親に声をかけた。


『母さん、行ってきます…。』


タイムマシンに乗り込むと、リュックを座席に置く。


『さてと…どの時代に行こうか』






(今の平和な暮らしがあるのも一緒に戦ってくれた皆さんのおかげだ、ならば最後に別れた少し先の未来に行ってみよう、また敵と戦っているかもしれない)

(それならば戦況を把握して過去へ伝えに行く事がオレには出来る)



そう判断したオレはみんなと最後に会った時より、少し先の時間と西暦を基盤に入力した。




起動したマシンは、やがて静かに浮き上がる。


白色の光りに包まれた機体は、時空間の狭間に姿を消した。





……………………………



【再会】




朝日が眩しい


寄せては反す波の音…。


光々と照り返す陽射し



一瞬あまりの眩しさに、思わず日よけで手の平をかざすと、指の間から飛び交う鳥のシルエットが微かに見えた。



(あれは鴎島…すると此処は…)



どうやら海辺に着いたみたいだ。


あれこれ考える内に、うっかり着陸ポイントの入力を忘れていたようだった。


『はぁ…。』



疲労の溜め息が零れる


時空間の移動は一瞬だが 身体への負担が大きい。


機体を砂浜に着陸させると、操縦席のハッチを開けた。


海特有の潮の香り…。


波の音が耳に響いてとても心地が良い。


肌に感じる適度な暖かさが眠気を誘う。




眠気を感じてしかたがないオレはリュックを枕にし、機体に脚を乗り出せば、再度深い溜め息混じりの欠伸をした。





『ん…、あれ…。』



しばらくして目が覚めた。

またいつの間にか寝ていたようだ。


眠い目を擦り身体を起こす。


辺りはすっかり紅く色づいて、キラキラと光り揺らめく遠い海の水面には、沈み行く大きな黄金色の夕日が見えた。




機体をカブセルに戻したオレは、先程から近くで懐かしい気を感じていた。


わからない訳がない‥


この気は悟飯さんだ。



こういう時、相手の存在や居場所がわかるという能力は非常に便利がいい。

改めてそんな事を感じながら、夕日の向こうから感じる悟飯さんの気を頼りに、オレは水平線へと飛び立った。







……………………………







悟飯さんがいる近くまで移動すると、オレは自分の気を消した。



驚かせたいからだ



悟飯さんも大人になっているだろう、とにかく生きていてくれてる事がなにより嬉しい。


逸る気持ちを抑えながら、ある建物の前までたどり着いた。



いい香りがする



悟飯さんの住まいと思われる場所の窓の隙間から、立ちのぼる湯気と共にとてもいい匂いがする。



タイミングを間違えたか



夕食前の家庭を訪問する事に抵抗を感じたオレは、ただ玄関前でうろうろしていた。



すると、



玄関のドアのぶが回り、扉がゆっくりと開く。


突然の事に焦ったが、隠れる訳にもいかない。


扉から何歩か下がり、開く扉を静かに見つめた。


すると、相手の影が姿より先にオレを包んだ。


そこには、一人の女性の姿が見えた。
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