‡蒼色の扉‡(Main)

□未来からの手紙[前編]
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「人の一生はねプレゼントの箱と同じなのよトランクス…。

開けてみるまで中身はわからない。

何が入っているかわからないから開けるまでが楽しみなものなの、だからあなたも授かった人生を最後まで諦めずに悔いのないように生きなさい」


『…え、むずかしいことわかんないよ』


「あなたが大きくなったらきっとわかるわ」




……………………………




時は過ぎて




時空間を遡り、悟空達と供にセルとの壮絶な闘いを終えたトランクス。


自らの時代も平和に導いた彼は、その時代を生きる人々に大きな希望をあたえた。


しかし、心に刻まれた深い傷はそう簡単に消えるものではない。


それほどに、人造人間の手によって失なわれた命は、計り知れなく大きなものだった。


ある者は家族を亡くし、そしてある者は恋人や仲間を失った。


そんな辛い時代を生きる人々の様々な想いが行き交う中。


街の復旧が順調に進むとともに、人々の表情にも次第に明るさが戻っていった。



ーある日



日が沈みかける頃、庭で機械の手入れをしている母親に、帰宅したトランクスは声をかける。


『ただいま、母さん』


聞き慣れた声に振り返る母親は、笑顔でトランクスを迎えた。


「あらおかえり、今日もご苦労様。どう復旧作業は順調?」


そう、彼は少しでも街の人達の助けになればと、人手の少ない街の復旧作業のボランティア活動に自ら志願したのだった。


『ああ、随分進んだよ。しばらくは物資が届くまで待機ってとこかな』


「そう、じゃあ何日かお休みね。今夜はゆっくり休みなさい。あんたこっち帰ってきてからずっと大変だったんだから」



『ああ、そうするよ』







ーその日の夜。




ベットに寝転がり、天井を見上げていたトランクスは、以前過去に行った時の事を思い出していた。


(皆さんどうしているだろうか、また会いに行きたいな…

いや駄目だ。

オレはこっちの時代の人間なんだ。理由も無くそう何度もお邪魔するのは歴史を変えてしまう恐れがある)


でも…


平和になったこの時代が 嫌いな訳ではない。

だがみんなにも会いたい気持ちがある。


オレは迷っていた。


この街の人達と同じく、オレも多くの仲間や家族を失っている。

あの時オレを生かしてくれた悟飯さん…。

震える手を何度も強く握り返した…。

今にも消えてしまいそうな声で遺してくれた言葉をオレは忘れない。


〔…生きろ…。〕


あの時一人生き残ってしまった自分が嫌でしょうがなかった。

どうしようもない孤独と寂しさで、生きた心地がしなかった事を今でもよく憶えている。




『父さん…悟飯さん…』





もうこの世に存在しないはずなのに



あれほど胸を痛めた辛い記憶も、今じゃどこか懐かしい気がする。



オレにはタイムマシンがあるんだ




また会いにいけば寂しくなんかない。



後ろめたい気持ちはあった。


でも平和になったんだ。


オレは自分に言い聞かせながら、疲れた体をゆっくりと起こした。
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