◆銀魂部屋◆

□大嫌いの理由
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沖田がいつも通り一人で遊んでいるとその男はやってきた。
「おい、そこの」
目の前に影が差し自分が話し掛けられたのだと気付く。ちらりと目を遣ると目つきの悪い男が立っていた。
「……知らない人と口利いたらだめだって姉上が言ってました」
黒い。
それが沖田が抱いたその男の第一印象だった。
「そうか。ただ近くにコンビニがないか聞きたかっただけなんだが…そういうことなら仕方ねぇな。他の奴にあたる」
じゃあなと言って去ろうとした男を沖田は呼び止めた。常ならば無視するはずの他人を呼び止めたのは沖田自身にとっても意外なことで、内心の驚きを隠してその男に目を合わさずに手元の砂を弄りながら口を開いた。
「そこから出て左曲がって真っ直ぐ行ったところにありますぜ」
「口利いちゃいけないんじゃなかったのか?」
「困ってる人は助けろって姉上は言ってました」
「ありがとな」
くしゃっと沖田の頭を撫でて男は笑った。誰かに礼を言われるのは久しぶりで妙に照れ臭くなり沖田は顔を上げずにこくりと頷く。
「俺は土方十四郎っていうんだ。お前は?」
「沖田…総悟でさァ」
「総悟か。助かった」
そう言って立ち去った男―――土方を今度は沖田は止めなかった。去っていく後ろ姿をこっそりと顔を上げて見つめやがて砂遊びに戻る。
ぽつりと今去っていった男の名前を呟いてみるとくすぐったい感じがして沖田は複雑そうに唇を尖らせた。
作っていた山を思いっきり潰し帰ろうかと立ち上がると後ろから声が掛けられた。
「おい、総悟」
「え?」
振り向くとそこには先程の土方がビニール袋を持って立っていた。
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