運命

□運命の歯車
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俺は従兄弟の後釜で、5歳で皇太孫になった。
伯父上が交通事故で、この世を去ったからである。

俺の世界が180度、変えた出来事だった。
俺の人生という、歯車が少しずつ、動き出した。

大人達の期待が俺にのし掛かってきた。
出来の良かった従兄弟の後釜は辛いだけだった。
そんなものは耐えるんだ!と言うのなら、心を捨ててしまえば、楽だろうと、5歳ながらに思ってしまった。

それをふびんに思ったのか、お祖父様が、旧友とその孫娘を宮殿に呼んだ。

その少女が俺の人生を大きく変えてしまう事をこの時、思いもしなかった。

「お前の持っているのは、なんだ?」
俺は、少女に逢うまでに変わってしまっていた。

「えっと・・・この子は・・・」
少女が持っていたのは、ぬいぐるみだった。

【僕?僕の事だよね?チェギョン】
どこから、聞こえたのかが分からなくて、周りを見る。
だけど、ここにいるのは、チェギョンと言う少女と俺だけで、幻聴かと思ってしまった。

そして、なんとなく、ぬいぐるみを見てみると、チェギョンを見ている気がした。
そして、チェギョンはぬいぐるみを動かしていないのに、ぬいぐるみは僅かに動き、俺の瞳を見た気がした。

【僕の声が聞こえるんだ〜僕、チェギョンだけだと思ってた】
俺は漸く、ぬいぐるみが言っているのだと分かり、驚いてしまった。

「この子が何を言っているのかが分かるの?」
チェギョンは、瞳をキラキラさせて、俺に質問をしてきた。

「あぁ、どうなっているんだ?」
俺は驚きのあまり、返事をした後、チェギョンに質問をした。

「この子は心のある、ぬいぐるみ・・・私のたった1人のお友達」
チェギョンはぬいぐるみの説明をした。

「この子を連れて来たのは、私と同じだから・・・」
チェギョンと同じとは、どういう事だろうか?

「私ね。お父さんとお母さんの事、知らないんだ〜」
チェギョンは、そう言って、ベンチに座ると足をブラブラさせた。

「父上と母上を知らない?」
俺はどういう事だろう?と思って、耳を傾ける。

「旅行が好きでね。私を置いて行っちゃうんだ〜」
諦めた様に、空を眺め続けるチェギョンに、俺自身を重ね合わせた。

「そうか。俺も今は、父上と母上が分からなくなっている」
共通のものが、ここに合った。

だから、俺は素直になれた。

そういえば、俺が素直になったのは、6ヶ月振りだと、思う。
 
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