もうひとつの物語
□プロローグ
1ページ/3ページ
「おめでとうございます!殿下。双子にございます」
看護婦は廊下で待っていた男性に声をかける。
「そうか。良かった!」
男性は父としての喜びをくちにした。
皇太子の孝烈(ヒョヨル)とその妻であり、妃宮(ピグン)であるリンに、双子が誕生した。
だが、それを良く思っていない人達がいた。
王族会の人達である。
この王族会の人達は、皇帝の実権を握る為なら、何でも、してしまうような人達だった。
その為、皇太子が邪魔で仕方なかったのに、双子が誕生した事で、ある計画が実行されようとしていた。
5年の月日が流れ、双子は二つの墓の前で、手を握り合って、立っていた。
計画は実行され、皇太子と妃宮(ピグン)が亡くなった。
幼い双子は、悲し過ぎて、涙が出なかった。
祖父である聖祖(ソンジョ)は、陰謀を企てたのが、王族会である事を知り、双子に王冠の形で、真ん中にピンク色と青色の宝石が埋め込まれているペンダントを贈り、肌身離さず、付けている様にと、約束した。
『いつか、必ず、再会させるから』
と心に決め、双子を引き離す。
『残酷だと、分かっている。だが、このままでは、この子達に危険が及ぶ』
と自分自身に言い聞かせていた。
ピンク色の宝石を双子の姉に、そして、自分の友人に託し、青色の宝石を双子の弟に、イギリスへと、逃がす。
その時、双子の姉は王族会に、病弱で亡くなったと、報告する。
この事を知っているのは、宮の者達だけだった。
それから、3年後・・・
双子の姉は、宮を遊び場にして、遊びに来ていた。
「シン君!遊びましょう!」
宮殿の庭で、本を読んでいた探し人に声をかける。
「チェギョン、おはよう」
シン君と呼ばれた男の子は、その子に顔を上げて、朝の挨拶をする。
「もう少しで読み終わるから、待って!」
そう言って、本の続きを読むべく、顔を下げる。
「今日は何?」
チェギョンはシンが座っているベンチを回り込み、背中から抱きつき、本を見る。
「国の神話さ」
シンはチェギョンの行動を驚きもしなかった。
「実際には、いないんでしょう?」
チェギョンは、シンの態度が気に入らなかったらしく、体重をかける。
「チェ、チェギョン、本当に、もう少しで終わるから・・・」
シンは慌てて、チェギョンを引き離そうとする。
そんな2人を宮に仕えている人達は、優しく見守っていた。