短編
□迷いの森に、ご注意ください
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「ミルクー、何処ー!?」
薄暗く静かな森に、私の声が響く。
しかしそれに答える者はない。
少し虚しさを覚えていると、カサカサという音がした。
音のしたほうを振り返るも、そこには何もない。
期待した分、なんだか損をした気分になったけど、気を取り直して再び歩き出した。
今はまだ日は高いけど、もう少ししたら真っ暗になる。
そうしたら、いくらこんな小さい森だからと言って、帰るのは困難だろう。
私はミルクを探して、森を彷徨い歩いていた。
ミルクというのは、私の飼っている真っ白な猫だ。
ミルクとはこの夏休み、一緒におばあちゃんの家まで来たのだけど、初めて来る場所に好奇心を煽られたのか、少し目を離した隙に逃げられてしまった。
家の辺りを捜し歩くうちに、森へ入っていく白い影を見つけ、追ってきたらこの通り。
…迷ってしまったというわけだ。
暑くて服は汗でべたべた。
額から溢れる汗を服の袖で拭う。
夏真っ盛りの今。
いくら涼しげな森の中とはいえ、もう数時間も歩き続けたのだ。
砂漠をひたすら歩いてるような暑さだ。
…砂漠を歩いたことなんてないのだけれど。
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