嗤笑小説

□童貞野郎と根暗女。
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真っ白くなるくらいブリーチされた長い髪は、海外ドールの様に人工的で傷みきってしまっている。

触ったら、キシキシと嫌な音を立てしまいそうなのに、
それを更に、ヘアアイロンでくるんくるんに巻く。



確かに、今風ではあるだろうけど。



「もう、ヤバイだろ。無理だろ。熱をあてるな!髪を染めるな!」


学校の図書室。澤井綾人が、思わず、そう叫んだ。
壁には、“図書室では静かに”と書かれていたが案ずる事なかれ。放課後の図書室には、来る奴なんて殆んどいない。静かなもんだ。小煩いのは、彼くらい。



バービー人形ちゃんこと赤西洋子は、疎ましそうな顔をして、紙パックの紅茶をちゅうちゅうと飲んでいた。



今日は、ミルクティー。低カロリーバージョンだ。



「嫌だ。ぷりんになる。」



「そんな奴いっぱいおるわ。」



明るい髪になれば、なるほど、その対比は明らかなものになる。
よって、ちょっと弾けたクラスメイト達も、彼女程目立って分からなくとも、ぷりんだ。ソースがだれだれぷりんもいる。
けれど、それは彼女の美意識にはそぐわないらしい。夏でも、完璧フェイスの彼女は、頬杖をついて非難する。



「あぁ言うのをみっともないって言うんだよ。染めるなら染める。染めないなら、染めない。巻くなら巻く、ストレートにするならストレートアイロンで―――」



と、言いながら、またとれかけたくるんくるんの髪を巻こうとする。言ったそばからか!と澤井は、彼女の言動を阻む。



「止めろ。阿呆が!お前のキューティクルは、何処に行った?!海外か?アジア圏か?今直ぐにでも取り返しに行こう!」



熱い凶器を直接持つ事は出来ず、赤西の手を掴んだ。
すると、明らかな嫌悪感が赤西の顔に浮かんだ。不味い、と澤井は直ぐ様、その手を離した。



忘れていたけれど、赤西は、人との接触を極端に嫌う。
高1の時のお遊戯ダンスもビニール手袋持参だったじゃないか。



(潔癖症とは、また違う。)
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