堕落小説
□ショッキングピンク
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これは、もはや下世話でいかれたポルノ小説みたいなもんだ。
まともな文字を綴ったのが文学だと小説だって言うんなら、アンタのお気に召すもんは書けそうにありません。
どうぞ、まだ、その双眼が綺麗なうちに目を瞑ってくれ。
笑止。
アンタは、これを読む気だそうだね。随分といかれてるのか、それとも色好みする奴なのかい―――――って、そんな事は、どうでも良かったけな。
大笑。
最初に書いた様に下世話な話しでね。うちの息子の話しなんだが、これが誰に似たのか相当頭のいかれた奴で、画家なんて言う金にもならない愚職を勤めてらした。 そんで、蛾鬼みてぇな絵を何枚も描いては、
『芸術だ!』
とか、
『自分は、百年に一人の逸材な訳であります。皆様、この意味がお分かりになられて?』
だとか、気狂いじみてる事叫び散らしながら御近所中を走り回ったりを何度もしたもんだから、うちの家族は、皆気狂い扱いさ。
自営業だったから、仕事も減ってね!
それが、あんまりにも腹が立ったもんだから、息子に、ちょっとの小遣いを左手に握らせて家を追い出しちまった!ははっ!でも、やっぱり、あれは頭がいかれてんだろうな。泣きもしねぇし、文句も言いやしねぇ。寧ろ、嬉しそうに笑ってな、
『お父様、こんなにお金を下さって、僕を追い出して下さるのですね。
嗚呼、なんて貴方は慈悲深き人なんだ!ハレルヤってね。』
って意味分からねぇ事言うんだ。さすがに、これには呆気に取られたな。
そうだ、哀れだとも思った。
失笑。
そんな気狂いの、うちの息子が先日、結婚したって言うんだから驚きだろ?
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画家の上村和紀は、不味い酒を煽った帰り道に迷惑な女を見つけた。その迷惑な女と言うのは、一々道のど真ん中で、わんわんと大声で泣いて、時々、醜く嗚咽を漏らしていた。
正常な人間であれば、ここを知らん顔して足早に通り過ぎて行くのであろうが上村は違った。彼は、その日どうしても道の真ん中を歩きたい気分であったのだ。
なので、当然、平気で女に声をかけた。