懺悔録
□魔法の呪文
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あれはいつのことだったかしら?随分と幼かった時の頃のような気もするし、十二分に分別もついていた時の頃のような気もする。
私、目を開けたまま夢を見てたの。
(世界は私を中心に回ってるって。)
そんな幼稚な夢を見てたの。でも夢だってことは分かってた。だって私の思い通りになることなんてただの一つもなかったから。描いてた夢を描き切れず書き損じ、小さな小さな挫折を幾つも繰り返して傷付け傷付けられながら足掻いて足掻いて、でも結局はどんなに取り繕ってみせようとしてもそれは齟齬でしかない。
その上自分自身では目に余る齟齬すら世界や社会や他人にとったら取るに足らないどうでもいいことで、
頭を抱えて酒に酔って管を巻きうなだれているのが馬鹿みたい。
(かしこまって言ってみたけれど、よくある話し。私は高校を中退し特にこれと言ってやりたいこともなくって、特別にもなられなかっただけ。平凡さを恐れてただけ。)
でも最後の切り札。私、魔法の呪文を知っていたの。(夢見るシンデレラよりも魔法を使える魔法使いの方がどれだけ素敵かしら。例え幸福を知らなくとも。)
「退屈。」
「つまらない。」
「下らない。」
「ねぇ、何時になったら殺してくれるの?」
それは受け入れきれない世界を拒絶する魔法の呪文。
自分の殻に逃げ込み閉じこもる魔法。
理由の為の呪文。
若しくは世界に対する愛憎の呪いの言葉。
生への諦めの言葉。
(嗚呼!最後の最後の切り札がこんな言葉だったなんて!)
夢を見てたの。
今でも夢を見てるの。
世界を忘れた私だけの夢を。
夜子。