堕落小説
□それは、悲しい事に恋でした。
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「貴女を命に代えても御守り致します。」
目の前の完璧な男は、片膝をついて私の手の甲に唇を落とした。
余りにも、様になっている、その甘ったるい仕草に、つい私は、何処かの令嬢にでもなった気になっちゃったけど、
思い返せば、貴方って、
「随分と耳障りの良い台詞ね。それが、ストーカー及び拉致監禁の言い訳になるとでも?」
そうよ、犯罪者じゃない。
どんなに、とびっきりのイイオトコで金持ちでも、か弱き乙女をさらって一年も監禁するなんて、いかれている。
それを指摘してやれば、貴方ったら困った風に笑うのよ。
「何をおっしゃいます、レミ様。貴方を、下界の汚いものから守っているのです。」
ねぇ、なんで迷いもなく、おかしな事を言えるの?
「世界は汚いの?」
「えぇ、とても。」
「そうだったけなぁ。」
そんなの、思った事もなかったけれど、
(きっと、貴方にとって、優しくも暖かくもなかったのね。)
綺麗な白い手で、美味しい紅茶をいれれる貴方でも、
小難しい本を、すらすら読めてしまう貴方でも、
世界は生きにくいのね。
「子供みたい。言い訳をつけて怖いものを遠ざけて、
私が綺麗って言う虚像を創って喜んでるなんて。」
壊れてるわ。
柔らかく微笑みかけると、貴方は今までの甘ったるい態度が嘘のように、
荒々しい手付きで、私を求めるの。
瞼に落ちた唇は、貴方の理性。
口にくれた、それは、塩っぱかった。
(泣いてるの?)
「幼女強姦魔さん。」
例え、これが、悲しみからくる合意の上だったとしても、貴方に罪状は更に乗っかるのよ。
「貴方は、貴方から、何時だって私を守ってくれないじゃない。」
私は、インランになりたくないから、罪を押しつけた。
貴方だって、それには気付いているのに、私を汚さない為に何にも言えないの。
「ねぇ、キスを下さい。愛しいひと。」
そうやって、私に縋りつくしかないね。
なんて、かわいそうな、イトシイヒト。
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可笑しな日常が、
愛おしくって、
狂おしくって、
切り離せないでいたの。