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□何言ってるかわかってます?
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見慣れた家の玄関を通り抜け、リビングのおばあさんに声をかけて階段をのぼる。お姉さんはまた部屋で仕事詰めのようだ。目的の部屋のドアを、腕に抱えた荷物を押さえながらノックする。

「遊馬ー? 入るよー」

返事は聞かない。ガチャリとドアをあければ物に溢れたいつも通りの部屋。…と、ハンモックの上の部屋の主。年下の幼馴染みは昼間だというのにすやすやと寝ていてつい呆れる。また夜眠れなくなって朝寝坊するパターンだとわかっているのに起こせないのは、寝顔があまりに穏やかだからか。

「…ま、仕方ないか」
『何が仕方ないんだ』
「うわあ!?」

ぬ、と突然背後から現れるアストラルに不覚にも酷く驚いた。

「驚かせないでよ! …遊馬起きてないよね」
『##NAME5##はいつも変だな。起こさなきゃいけないというような顔をしていたのに、起こすのを躊躇している』
「…いつから見てたのよ」
『入ってきたところからだ』

持っていた荷物を遊馬の机の上に置く。中はついさっき焼いたばかりのマドレーヌがまだあたたかいまま入っている。

『それはなんだ?』
「マドレーヌ。あ、アストラルのぶんもあるよ。食べる?」
『まど…まどる?』
「ま、ど、れ、え、ぬ。美味しいと思うよ」
『そうか。ではいただこう』

箱の中から一つ取り出して、アストラルに向けて差し出す。ふわり、浮いたマドレーヌはまばたきしている間に無くなっていた。

「…いつも思ってるんだけどアストラルってどうやってもの食べてるの?」
『私にもよくわからない』
「なによそれ」
『なかなかうまかった。ありがとう』
「うん、こちらこそ」

相変わらず眠ったままの遊馬をよそに、二人で静かに談笑。遊馬が起きていたらこうはいかない。

「遊馬には悪いけど、私この時間好きなのよね」
『どの時間だ?』
「こうやってアストラルと二人で話してる時間」
『何が悪いんだ?』
「え? …ああ、二人で、って限定するとさ、なんか遊馬が邪魔って言ってるみたいじゃない」
『なるほど』
「うん」

開けた窓からは風が入り込んで、私の髪を揺らす。


『私も好きだ』
「え?」
『##NAME5##と二人でいる時間だ。穏やかになれる』

急に饒舌に喋り出すアストラルはじっと私の目を見る。

『遊馬に悪いだなんて思わない。私は##NAME5##と二人でいるのが、とても好きだ』





何言ってるかわかってます?
(他意はない…はず!)(不覚にもときめいたなんてそんなばかな)



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