短編

□甘い逃避を
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 好きで好きで好きで堪らなかった温もりがある
酷く安心するその場所は、一夜限りという制限の中幾度も僕を包み込んだ
温もりの中、確実に強くなるばかりの感情を覚えるたびに別れが辛くなる
どうせならばこんな優しさなど見せずにいていれたらどんなに良かっただろう…

どうせ終りがくるのだから、そんな事を考える時間が無駄だろうか?
夜空に上がった月が沈むまでの少ない時間をまだまだこの暖かい包容に甘えていたい
酷くされても、痛くされても、どんな扱いを受けても良いから彼と居たい
だけどもそんな事が許される筈もないから、今は…今だけはこの濃厚な熱い時間だけを感じていたい。
頭の中の考えを振り払いたくて、この温もりをギュッと抱きしめた

「どうかされましたか?」

何時も通りの優しい声。包み込むように抱きしめられれば更に近くなる温もりを失うのが億劫になる
こんな事を思ってしまうのだから、もうずっと前から…

「…カミュ将軍、貴方のお陰でずっとどうかしていますよ」

「なら、それ以上どうかしてあげましょうか?」

髪を透きながら顔を上に向けられる
そして、予想通りの口づけがおとされる。この『口づけ』が彼からことの始まりを告げる合図だ。
くちゅくちゅと鳴る音が森の中に響く。誰かにバレないだろうか等といった心配事は一つではないが、口の中を舐められれば身体がびくりとはね、そんな事を考える暇も無くなりだす
カミュ将軍と同じ様に舌を相手の口内へ入れ、絡ませるが何時も簡単に持っていかれる主導権は今回も彼の物のようで、ただ僕は洩れそうになる声を抑え震えて折れそうな膝を庇い後ろの樹木にもたれ掛かりながらただただカミュ将軍から与えられる口づけを必死に受けとっていた。
流し込まれた唾液を飲み込むと飲みきれなかった分が口の端から流れ落ちた

「マルス王子…次から瞳を閉じてもらって良いでしょうか?」

唇が離れると口寂しさが生まれ、こくりと頷きこちらから口づけようと手を伸ばし抱き寄せ瞳を閉じると唇の感触とは別の物が口にあてられた
なんだろうと瞳を開けると口の中に指が入ってきた。何度か行われた今までの行為から考えれば、舐めろということだろうとカミュ将軍の指を舐める
その間に一枚一枚脱がされていく服から露出した身体が冷気に晒されぞわりと肌が粟立つ
肩をべろりと舐められ、口内にある指でくぐもってはいるが普段は出さない高い声が口から洩れた
それと同時に膝ががくんと折れたが、カミュ将軍の左腕が腰に回された事により倒れずに済んだ。
指が口から抜かれ、ズボンがおろされる

「かみゅ‥しょ うぐ…ん」
「喋らない方が良いですよ…、力を抜いていてください。」

会う度に繰り返されるこの行為は今回で何度目になるのだろう。
そういえば今回で5度めだったな
まだ片手で数えられる回数だ…
でももう5回…。
そろそろ、本当に。

「今回で終りだ」

大きな背中に抱き着きながら聞こえるようにハッキリと言った
けれどもカミュ将軍からの返答は無く、僕は返事をせかす事をせず黙って最後と決めた熱を受け入れる事にした



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