ごったに。

□フリーダム×フリーダム
1ページ/1ページ








「甘いね。」


「甘いのう。」


「口から砂糖出そうだよ、しかも上白糖。」


「俺はべっこう飴が出そうじゃ」





爽やかな秋風が教室を吹きぬける中、私達は共に無表情で同時に溜息を吐いた。

二人で向かい合う様に座り、片肘をつきながら視界の端っこでピンクのオーラを出してイチャついてる丸い豚を仁王と眺めている。





「前までは私達と一緒にだらけてたのに、彼女出来た瞬間コレだ。」


「俺たち、ブンちゃんに見捨てられてしもたんじゃ。」


「裏切り者ブンちゃんのお菓子を全部バッキバキに砕いてやりたい。」


「おお、怖。でも、加勢しちゃる。」




一時間前から最近できた彼女とずっとイチャついてる丸井。

仁王情報によると幸村と真田の不在のためで今日部活がないらしい。

それを良い事に今日、丸井は放課後に残って彼女と存分にイチャコラしている。

目の前でイチャコラされると迷惑以外の何物でもないし、飽きずに二人でお菓子の食べさせ合いをしている所を見ると怒りを通り越して呆れてくる。

私はまた眉間に皺を寄せて溜息一つ溢した。






「何ちゅう顔しとるんじゃ。」


「いや、別に。リア充爆発しろって思っただけだし。」


「素直やないのう。」





意味深な発言をしてクツクツと喉で笑う仁王。

私も自分が素直じゃないって事知ってる。そして、仁王も素直じゃないと言うと、俺も知ってると返された。






「つい此間までは、今の関係で十分だ。告白する気も付きあう気もねぇ!って言ってたのは何処のどいつだ。」


「ぴんぽーん」


「はい、仁王氏。」


「菓子ばっか食ってる、糖尿病寸前の赤い豚。」


「正解。正解した仁王氏にはポッキー1袋を贈呈しよう。」


「プリッ」




カバンからポッキーを取り出して、二人でボリボリ食べる。

視線を合わせるわけでもなく、ずっと幸せそうに彼女と話している丸井に視線をやっている。

ちらっと仁王に視線を戻すと、奴はポッキーを銜えて「ポッキーゲームせん?」と聞いて来た。勿論スルーする。





「つれん奴じゃ。」


「・・・・・・あのさ、」


「ん?」


「なんか、なんかね。」


「・・・・・・」


「・・・・・寂しいな、と思ってさ。」


「・・・・・そう思っとるんはお前さんだけじゃないナリ。」





仁王に再び視線を戻しても、仁王は丸井達を見たまんまで。

心の中にある歪な形をした寂しさが膨れあがる。でも、顔に出したくなくて。私は苦笑いして誤魔化した。





「俺らはダチじゃ。素直に祝ったらんといかんじゃろ。」


「今まで、お互いが一番の関係だったからね。・・・・・ちょっと横取りされた気分だな。」


「娘を取られた父親の気分みたいな感じか。」


「いや、これは長年連れ添った旦那に夜逃げされた気分の方が的確。」


「ほう、そら大変じゃ。」





冗談言い合っても、気分は沈んだままで。

友達を取られたからって彼女に嫉妬する私達ってちょっと未練がましいかな。

彼女なんだから仕方ないよ。心から祝福してあげようよ自分に言い聞かせても。

心に何かがつっかえるような、わだかまりが残ってしまう。

こんな自分が嫌で、紛らわそうとして目の前にあるポッキーをボリボリ必死に食べているとあっと言う間に空になってしまった。





「のう。」


「ん?」


「この寂しさを消す術を見つけたぜよ。知りたくなか?」


「・・・・・何でも良いから教えて欲しい。」






「それは、ブンちゃん達に負けんぐらい俺等もイチャイチャすればよか。」


「は、」


「つまり、俺達も付き合うんじゃ。」


「馬鹿じゃねぇの。」


「意外と俺、マジぜよ。」


「えええええええ」





吃驚して、丸井から視線を外して仁王を見てみれば、仁王は真面目な顔をした後、薄く笑った。

頭大丈夫かと思ったが、仁王の脳はちゃんと正常に作動しているらしい。

でも、よくよく考えてみれば悪い話でもない。仁王と趣味も合うし一緒にいて居心地も悪くないし。

今まで仁王に惚れなかったのが不思議なぐらいだ。

今は相手の事を友人としてしか見れないがちょっとずつ意識して最終的に思想相愛になれば良いなと思いながら

少し頭を捻った後、私は首を縦に振った。






「うん、悪くないね。」


「おお、これは意外な反応ナリ。」


「今はね、友人としてしか見れないけど最終的に仁王を好きになる予定です。」






長期戦か、お前さんを落とすには骨が入りそうじゃ。と舌をベっと出す仁王。

でも、その表情はちょっと前よりどことなく優しさを纏っていて、視線がかち合うとお互いに微笑んだ。

こんな恋愛の仕方もアリかな。仁王が落とすって言ってるんだし、この流れに身を投じるのも良いかもしれない。






「さあ、どうするダーリン。」


「ポッキーゲームでもするか、ハニー。」






口元を上げながら仁王がくわえているポッキーの端を音を立てて噛り付いてやった。







フリーダム×フリーダム






(お、おい!お前ら何やってんだよぃ!!)


(ポッキーゲームじゃ、見て分からんのか?)


(そ、そうじゃねえ!!)


(問題ないよ、私達。)


(恋人だから)(恋人じゃから)













20110726.桜様へ捧げもの

.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ