へたれ ト ちきん ト がらすのはーと

□答えは見つかるはずがない。
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自室で変な女が走って逃げて行ったときに落っことした携帯を弄りながらお茶を啜る。

別に興味が湧いたわけじゃない。ただ単に恐れつつも自分に反抗する使用人を初めて見たから。

草壁と理解不可能な会話をする。そして、僕の攻撃を避けてヘラヘラ笑うあの度胸。

・・・・・・ほんの少し、少しだけ気になった。


携帯の中を弄れば少なからずあの変な女の情報が手に入るかもしれないと期待を胸に

ババ臭い鈴のストラップがついた白い携帯を片手で開けると待ち受け画面が目に飛び込んできた。

視界に入った携帯の画像は全身白タイツでレモンの被り物を被った笑顔の男がVサインするなんともシュールな画像。


(何これ。)


自然と雲雀の眉間に皺が寄る。


(こんなのが待ち受け画面とか、あの女馬鹿じゃないの。)


見ていてあまり愉快な物ではないと判断した雲雀はメニュー画面を開きプロフィール画面を開いた。

緒方真白、メールアドレスは初期設定のまま変更もされていないし、電話番号も特別な物でもない日本の番号。


(面白くないな。)


他に何かないのかとデータフォルダを開いてみてもレモンの被り物を被った男のシュールな画像ばかり。

雲雀の眉間の皺がより一層濃くなる。

雲雀は片っ端からフォルダを開いていくがないもない事に不機嫌になりながら

シュールな待ち受け画面に一旦戻してメールボタンに指を伸ばし、送受信のフォルダの欄を選択してボタンを押した。

たとえ他に何もなくとも、他人とのメールの中には何かしら彼女の情報があるはず。ないわけがないと絶対的な確信がある中、効果音と共に浮かび上がってきた文字。


<フォルダの中は空です>


一瞬目を疑った。


携帯を持っていてメールを利用しない奴はそういるだろうか。

規制を掛けられているならまだしも、彼女の場合理解していて使っていない可能性が高い。

理由を探るべく急いでアドレス帳を開くと登録されてるのは5件のみ。


うどん屋・ピザ屋・ラーメン屋・寿司屋・クリーニング屋。





これを見て溜息が自然と出てくる。

固定電話を使えば良いものをわざわざ契約してまで携帯を使うとは益々彼女への疑問は膨らむばかりだ。








「哲、いるんでしょ。」








雲雀が一声かけたと同時に襖が開き草壁が姿を現し、地面にひれ伏し土下座した。








「頼まれていた仕事を忘れて、使用人と談笑していた事。申し訳御座いません。」



「そんな事はもうどうでも良い。さっきの使用人の子何?」



「私も初対面でして、あの使用人の名前すら存じ上げません。」



「・・・・・・・君ってほんとに使えないね。」







顔面蒼白にしながら草壁は全身全霊で謝った。

そんな彼を横目に真白の携帯を弄りながら手元にあったお茶を啜った。








「そんな所で突っ立ってないで仕事して来たら。」



「はい、恭さんのスーツの手配と弾の補充ですね。」



「それと今年度予算の内訳が抜けてる。雇用費については一人一人の支給額の詳細まで出しといてって言ったでしょ。」







「六時までには終わらせといて」と付け加えると

草壁は大至急仕事に取り掛かる為、一つ礼を残した後
、雲雀の自室を飛び出した。


ほぼ全て中身を確認したが何もない女の携帯を机に置いてゆっくり深呼吸する。


後、どれくらいで女がこの携帯を取り返しに来るだろうか。


(ざっと見積もって10分くらいかな。)

僕の手にある携帯を見た時、彼女はどんな顔をするのか、そしてどんな受け答えをするのか。

怒る、笑う、泣く?

これから起こるであろう事に思考回路を回しつつ雲雀はゆっくりと口元を上にあげた。


黄色い鳥が澄み渡った空で旋回し、夏特有の生暖かい風が部屋を一気に駆け巡る。

風邪で飛ばされそうな書類を片手で抑えながら、外から聞こえてくる鳥が歌う歪なメローディーに混じって何かが聞こえてきた。

何かの声に耳を傾けてみると聞こえてくるのは誰かの声。


(読みが外れた。しかも同行者に草食動物を連れて来るなんて想定外だ。)


客人が来るまで時間が掛かりそうだと察した雲雀は深く深呼吸した後、目を軽く瞑った。









「無理です無理です無理です無理です」


「・・・・・・いい加減腹括れよ」


「何で自室まで訪ねなきゃいけないんですか。」


「雲雀が拾って持ってるかもしれねぇじだろ。」


「ないないない。あの人人の携帯拾うような性格じゃないですよ、きっと。笑顔で落ちてる携帯踏みつぶすような顔してますし。」


「じゃあ今頃お前の携帯は粉々だな。」


「・・・・・・・いいい嫌だ!!!最低じゃないですか!!!」


「アイツはそんな陰湿な事するような奴じゃねぇって。」


「人の髪の毛をアンシンメトリ―にしといて何処が陰湿じゃないと。」


「まだ、根に持ってんのかよ。」


「ええ。今月ピンチなのに美容院で使う金は何処にもありません。」


「そんくらい俺が出してやる!!」


「うわあ、イケメン!男前!!」


「だから、金出すからさっさと入れよ。」


「それとこれとは話が違う!」


「我が儘過ぎんだよテメェはぁぁあ」


「強情過ぎるんですよ獄寺さんはぁぁあ」


「うるせぇええ入れぇぇえええ」


「ぎゃぁぁああ引っ張らないで下さいぃいいい」
















(・・・・・・・・煩い)



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