儚い一瞬の夢

□一歩
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私は、今までこんなにも心臓がうるさく鳴ったことは無いだろう。
  そう、今私は隣の席のキョン君に教科書を見せているのだ。
幸いなのは今日、キョン君の後ろの席の涼宮さんが休みな事だろう。

          (ありがとう!涼宮さん!)

涼宮さんに一通り感謝した私は、黒板を見ながら真剣に先生の話を聞いているキョン君を盗み見た。

      (格好良いなぁ・・・)

重症だな、と自分でも思う。
彼を見るだけでも嬉しいのに、今、彼を見ているのは私だけ。
そう思うと口元が緩む。
思わず見つめていると、視線に気が付いたキョン君と目が合った。
恥ずかしくて目を逸らす。

          (うわ〜、見てたのバレたよ〜・・・)

恥だ。なんて項垂れている私の机に、紙が転がってきた
     カサッ
中にはキョン君のキレイな字で

      〔何目逸らしてんだよ〕

キョン君を見ると、声を出さずに笑っていて、それにまたキュン、とした。
それでも、そんな事思っているなんてバレたくなくて、急いで返事を書いた

      〔びっくりしただけ。〕

なんて可愛くもない返事。
それでも、キョン君はちゃんと返事を返してくれる。

      〔何で見てたんだよ。〕
      〔秘密。〕

なんて、不恰好な手紙を書いててもお互い笑って。


キョン君とくっついてキョン君と手紙。それだけでも、こんなに嬉しいなんて!
なんて、一人喜んでいると、キョン君から手紙が。

      (返事遅かったな。)

なんて思いながら手紙を開いた。

「・・・っ!?」

手紙の内容を見て、思わずキョン君を見る。

「・・・」

真剣に黒板の文字を書いているように見えるけど、
顔は赤く、シャーペンの芯も出ていない。
そんなキョン君の姿を見て、思わず、また改めて涼宮さんに感謝した。



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