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□買われる人
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広場には、様々な〈買う人〉が来ていた。
うつくしい女はいるか?力のある男はいるか?と…。
仲間達が、一人一人引き出され、番号、性格、そして値段が発表される。
それらをぼんやりと見つめていると、グイッと腕を引っ張られた。
「…この少年は、番号ag018323。気丈な性格。値段…えー、12万。」
淡々と告げられる、自分の未来を決める重要な言葉。
なんだかそれが嫌で、拡声器を口に当てている男を睨みつけると、近くの警備兵に容赦なく頬を殴られた。
口の中に鉄の味が広がる。
「えー…ag018323号に付け足し、で、性格野蛮。」
畜生。なんでだ…。
少年の涙で霞む視界に、一人の男が映った。
射抜くような眼差し。
今の彼にとって、それすら怒りの対象でしかなかった。
──
───
──
窮屈な檻の中。
閉じ込められた自分達を〈買う人〉達が、舐めるように見て行く。
「ジュル!この若い娘はいくらだ?」
「へぇへぇ!こいつぁ、38万とちょっとですわ。」
「よし!!乗った!」
「毎度。」
ギギィ…と、檻があき、女は外に引っ張り出された。
「や、やめて!行きたくない!」
彼女が、ぐずぐずと泣き出しても、誰も気にかけない。引っ張られて、彼女の細い背中は人混みに消え去った。
「…ジュル。」
程なくして、〈売る人〉であるジュルは、名を呼ばれ振り向き、大袈裟に目を見開いた。
「これはこれは!ドジェルの若頭!お初にお目にかかります!」
そこにいたのは、すらりと背が高く、薄い灰色の長髪を一つにまとめた、美しい面持ちの青年だった。
「手中にしたいものが有るのだが…。」
「ほうほう!さて、それぁ、どの女ですかい?」
羽を休める蠅よろしくジュルが手をさすっていると、ドジェルの若頭は首を横に振った。
「女など、おれには必要ない。」
「へぇ、左様ですか。」
「こいつが欲しい。」
「は…?正気ですかい?」
冷たい眼を当てられ、少年は、キッとそれを睨みつけた。
台の上から〈買う人〉を見ている時に眼があった、あの男だ。
「そ、そんなひょろっちいガキ、糞の役にもたちません!ですから…。」
「口を出すな。この場でその首跳ねようか。」
「ひ…!!」
ジュルはあわてて口を抑えた。
若頭と呼ばれる青年は、口を抑えている男から檻の鍵を受け取り、少年のいる檻の鍵穴にスッと差し込む。
少年は、ぼんやりとしたままそれらを見ていた。
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