basket

□灯台下暗し
1ページ/4ページ


「なんだかなー。」
 早いもので、もう高校二年。
 しかし、自分に『モテ期』とやらは来るのだろうか。
 校舎の屋上で、そんなことをぼんやりと考えていると、ふと、よくしった声が聞こえてきた。
「よっ。モジャコぉ。単細胞の癖に悩みなんてあるのか?」
 モジャコ──もとい、花岡巻(ハナオカマキ)が振り返ると、そこに、幼馴染みの日浦純(ヒウラジュン)がコーヒー牛乳と書かれた500ml仕様の紙パックを持って、扉に寄りかかって笑っていた。
 巻は、興味無さそうに視線を校庭にうつしながら口を開いた。
「なぁにがモジャコよ。あたしにだって悩みぐらいあるし。…第一に単細胞ってナニよ!あたし、あんたより成績上じゃない!」
 それを聴いて純は、ストローをくわえたまま、あははっと笑った。
「はいはい。違いねぇな。巻の方が成績上ってのも、髪の毛クルックルってのも…!」
「…なっ!?純!!」
 怒りを露にした巻の上履きが、純の顔にクリーンヒットしたことは、言うまでもない。

       *

「…痛かった…かも?」
 しゃがみこんで顔を押さえている、涙目の純の前に、男と間違えられても仕方のないようなショートカットの天然パーマ、巻が仁王立ちしていた。
「…かも?じゃねぇよ!せっかく人が、静かに物思いにふけってたってのに。」
 純は、キッと巻をにらみつけた。
「静かにだぁ?お前最初っからブツブツブツブツ、声出してたじゃねえか!」
「…。はぁぁっ?」
 一瞬遅れてから巻は、顔を真っ赤にさせて、口元を手で押さえた。
 それを見て純は、はぁっ溜め息をついた。
「…無自覚かよ…。」
「え?ちょ、ちょ、ちょっと…!!わたし、声出してたの!?」
 純は、
「そうだよ。」
 と、答えながら、避難させておいたコーヒー牛乳を拾い、立ち上がった。
「まっ。モジャコにもいつか来るだろ?『モテ期』。」
「は?」
 階段を降りようとする純をみて、ようやく巻はショックから立ち直った。
「ねぇ純…。」
「ん〜?」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ