防衛少女723ちゃん

□その名は『共鳴砲』!
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「夏美さん、よろしいでしょうか?」
食事と入浴を済ませた夏美が自室でくつろいでいるとドアのノックと共にモアが顔を覗かせた。
「うん、良いわよ」
「失礼します」
夏美の了解を得たモアはドアを開けるとニコニコしながら部屋の中へと入って来た。


夏美はモアを招くとテーブルの向かい側に置かれたクッションに座らせた。
「モアちゃんもう大丈夫なの?」
モアが腰を下ろしたのを確認すると夏美はモアの体調を尋ねた。
ケロロから『モアは実家から帰った後、体調不良で休養している』と聞いていたからだ。
「はい、って言うか体調万全?」
「そう、良かった」
ニコニコと笑顔で頷くモアの様子に夏美は安堵の息を吐いた。
「ありがとうございます夏美さん、ご心配をおかけしました」
そんな夏美の姿にモアも嬉しそうに頭を下げた。


「それでモアちゃん、あたしに何か用?」
モアが持参したジュースを一口飲み少し落ち着いたところで夏美がモアに来た理由を尋ねると
モアはすっかりその事を忘れていたらしく大きく手を叩くと用件を話し始めた。
「あ、そうでした……実は夏美さん、パワードスーツの最終兵器についてなのですが……」
「『共鳴砲』って奴?」
「はい」
どうやらモアの用件は昼間にギロロが言っていた『共鳴砲』についてらしい。
「折角だけどあたしはあの『ゲロゲロ……』ってバカみたいなのはやる気ないからね」
『共鳴』と言えばケロロ達が集まると行う「ゲロゲロ……」という鳴き声を出し合うものだ、聞けば様々な効果があるのだという。
今回も最終兵器として使うくらいなのだからギロロ達にしてみれば最高かつ最終的な作戦なのだという事が夏美にも解る。
だが夏美はケロン人ではない。
あの『ゲロゲロ……』を自分が口にするのはどうにも我慢が出来ないのだ。
そうでなくても普段ケロロやギロロが共鳴している姿を馬鹿馬鹿しく滑稽に感じているのにそのような事を自分がやるなどあまりにも恥ずかしすぎる。
もしそんなところをあのジョージや623に見られたらきっと死んでしまいたくなるだろう。
夏美はきっぱりと断った。

「はい、わかっています…って言うか重々承知?」
夏美から断りの返事が出る事をモアは初めから承知していたのだろう、夏美の強い口調を聞いたモアは笑顔で大きく頷いた。
「だったら話が早いでしょ?嫌なものは嫌なんだから」
「違うんです」
あからさまに嫌そうな顔をする夏美にモアは笑顔を見せると手を横に振った。
「違う?何が?」
「これを見てください」
訝しげな顔をする夏美にモアは一枚のディスクを差し出すと勝手に机の上にあるパソコンにセットした。

するとまもなくモニターに何やら説明文の様なものが表示された。
「なに?これ」
「クルルさんから預かってきました、『共鳴砲』の説明書だそうです」
「……これって」
説明文を読んだ夏美は目を丸くしている。
「ご想像のものとは違いましたか?」
「……うん」
どうやら夏美の想像していたものとは異なるらしいが即時に拒絶しそうな様子でもない。
そんな夏美の様子にモアは顔をほころばせると説明を続けた。
「それでですね夏美さん、この『共鳴砲』を完成させる為には夏美さんにも少し特訓を受けていただかなくてはなりませんので……」

「そうね、こんなのすぐにやれって言われても無理……」
どうやら練習なしでは出来そうもないものらしい、夏美は顔を横に振った。
クルルもモアもその事を予定していたらしくモアは地下基地に練習する場所を用意した事を夏美に告げると
部屋にある姿見に地下基地との空間を繋げた。
「地下の基地内に特訓場所を用意しました、この部屋から直接行ける様に亜空間チューブを繋げましたので頑張ってくださいね、って言うか心配無用?」
「……これならまだ…うん、あたし頑張ってみるわ」
パソコンの説明を読んだ夏美は何やら納得したらしくモアに向かって大きく頷いて見せた。


「夏美さん」
話がまとまりパソコン画面に映し出された説明を一生懸命読む夏美にモアが声をかけた。
「なに?」
「本当は私も皆さんとご一緒したいんです……でも私はアンゴル族、地球人ではありませんからこのような形で応援させていただきますね」
普段ならモアも『モア・ピーチ・サマー・スノー』と呼ばれ、夏美や桃華、小雪たちと行動を共にする事が多い。
当然今回もモアとしては夏美達と行動を共にしたいところなのだがモアはアンゴル族の為、共に戦う事が許されないのである。
「うん、ありがとモアちゃん…早速今日から特訓するね」
「はい」
夏美の言葉にモアは満面の笑みを見せると部屋から出て行った。



それから数日後……
「夏美さん、この前倒し損ねた宇宙人が街で暴れています」
「なんですって!」
朝、学校に登校しようとしていた夏美の処に桃華が珍しく徒歩でやって来た。
どうやら前回倒し損ねた宇宙人が暴れているらしい。
「運動公園前で幼稚園バスを襲っているんです、一足先に小雪さんが向かっています」
「もう、今から学校なのに……分かったわ桃華ちゃん、急ぐわよ」
「はい」
「姉ちゃん頑張ってね」
キッチンで朝食の後片付けをしていた冬樹が顔を出すと夏美に手を振った。
「うん、ありがと冬樹……あ、そうだ」
「なに?」
「出がけに今日のお風呂掃除ボケガエルだからサボるなって言っといて」
前回ケロロは掃除当番をサボり夏美にきついお仕置きを受けたらしい。
「うん、分かった」
「よろしくね、桃華ちゃん行こう!」
冬樹にことづけを頼んだ夏美は桃華を手を引くと玄関を出て行こうとしたが冬樹の姿を見つけた桃華は何やら名残惜しそうにしている。
「西澤さんも頑張ってね」
「は、は、はいっ!」
冬樹が声をかけると桃華は顔を真っ赤にしながら玄関を出て行った。
「そうだ、ついでにあの事を軍曹に聞いてみよう」
姉に頼まれたことづけをする為に冬樹は地下室に降りて行った。
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