リカレント・パルプフィクション

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霧が濃くなった。

さっきから胸の動悸がおさまらない。
よくないことがあると、何かが頭の中で警鐘を鳴らす。


「ボス!」


蒼白な面持ちで執務室に入ってきたのは、雷の守護者だった。

「・・・騒ぐな、ランポウ」

一瞥するも、気弱な彼は体の震えを隠そうともせずに立ち竦む。

「何が、あった」

本当はわかっているような気がしていた。
でも、聞かないわけにはいかなかった。

「か、会議室で・・・ガヤルドさんとバルケッタさんが・・・」
「・・・死んでいたか?」

傍まで歩み寄り、肩に手を置くと幾分落ち着いたのかランポウは
会議室での有様を語った。

彼らは、自らの髪を引き抜き、爪を剥ぎ、皮膚を切り裂き、
目玉も刳り抜きながら発狂した後、発見されて間も無く死んだと。

「ボス・・・そんな、こと出来るのは・・・」
「言うな!」

思わず声を荒げた自分に、かなり動揺しているのだと気付く。

「・・・オレが、探そう」
「それはダメです!僕がGに叱られます!」

泣きそうな表情で腕を掴むランポウを引き剥がそうとしていると、
またドアがけたたましいノックと共に開かれた。

「ジョット。貴方はここで、俺たちと待機です」
「G!俺は!」
「非常事態です」
「・・・・・・・・だが!」
「あなたに何かがあった後では遅いのです」

入り口を塞がれ、背後にはランポウが窓を隠すように立った。

「今、アラウディが・・・探しています。場合によっては浅利も・・・」
「必要ない!そんな間違ったことあるわけがない!」
「ジョット!あいつは危険だったんです。俺はいつも・・・」
「・・・黙れ。あいつは、あいつは・・・」


スペードが自分の暗殺を企んでいたなら、いつだって出来た筈だ。
寝起きを共にしていのだから。

でも彼はいつだって、まるで硝子を扱うように優しく、そっと
大袈裟なくらい大切にしてくれた。

だから、間違いに違いない。
スペードはきっと、そのドアから落ち着き払った顔で入ってきて
「何かあったのですか?」
そう言うに決まってる。
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