東方小説

□優しさと温かさ
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ある日の博麗神社。
霊夢はいつものように境内を箒で掃き、お茶を啜る。
そして朝が過ぎ、昼も終わり、空が綺麗な夕焼け色になった頃…

「霊夢、お邪魔するわ」
そう言いながら、アリスが神社の階段を上ってやってきた。
今日は大宴会があるのだ。
幻想郷にいる顔なじみの妖怪、巫女、神様を呼んで酒を楽しみ、時を楽しむのだ。
そして宴会には欠かせない料理を作るために、アリスと一緒に台所へ向かった。

「霊夢」
「何、アリス?」
「指の皮膚、切れちゃってるよ…痛くない?」
確かに、言われてみれば指が少し痛い。
どうやら包丁で切ってしまったようだ。
「大丈夫?」
心配そうにアリスが覗き込んでくる。
手際よく切り傷の応急処置をしてくれている。
本当に優しいな、と心の中で霊夢は思った。
まるで母親みたいだ…そう思い、霊夢はハッとする。
(アリスには神崎がいる…私には、居ない。)
また、考えてしまった。考え出したらキリがない。今だけでも忘れよう。

さっきまで考えていた事を、頭の隅に追いやり、アリスにお礼を言う。
「ありがとう、アリス」
「どういたしまして、何か悩み事でもあるの?もしあったら、いつでも言ってね」
アリスはそう言うと、再び食材を切り始めた。

温かい、心が温かい。
気が付いたら、瞳が少しだけ潤んでいた。
少しだけ霊夢の寂しさが消えた。




霊夢は声にならないほどの小さな声で

















ありがとう











と言った。
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