10/04の日記

22:20
【S//D】※桑女王転生説【obox】
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※MARK→桑女王からのMARK→お札付きちゃん……?

※クロスオーバー!

※oboxのお札付きちゃんが、S//Dの桑女王の成れの果てだとしたら妄想文。

※世界を滅ぼしかねなかったお姫様は、力を失いただの女の子に戻ることが出来たのでした。







001

「あの子は無事生きているらしいよ」
 赤い表面に無数に埋め込まれた歪な目が一斉に僕を睨む中、僕はその物体を削除する前に、ふと思いついたことを口にした。このハート型した物体が感情を持つのかも、思考能力を持つのかも、そもそも僕の声を聞き言葉を理解できるのかも知らないのだからようは現実逃避だ。
 別に、沈黙が嫌になったわけじゃない。会話なんてそんなもの世界にありはしなかったんだから。そもそも僕に発声器官があって感情がある時点で不必要な能力負荷なんだから、生まれてから今まで会話なんてものを数えるほどしかしていないことも発声器官を数えるほどしか使っていないことをどうこう思ってなんか、寂しいと思ってなんかいない。
 いないんだけど。
「あの子がいた夢の中にも君とそっくりなのがいたよ。同じ種類の侵略者なんだろうね、おかげで攻略が早く済んだ。君達、ちょっと単純すぎやしないかい?」
 僕が初めて、この世界の侵略者を隔離、退治する為に投下されたあの世界。ウィルスのような侵略者の手によって作り変えられまともに機能しなくなったあの世界と、今僕が導入されたこの世界は、同じような姿をしていた。だからかもしれない、感傷に浸るなんて無駄なことをしているのは。
 一つ違うのは、この世界は記念すべき第一回目の世界ほど侵蝕されていなかった。だから、あの子のような存在はいなかった。この世界に取り込まれ、異質になってしまった、人間。世界ごと作り変えられてしまった生物。
 僕が言葉を交わす機会のある、数少ない存在。
 まだ勝手が解らず右往左往していた僕と、会話と呼べるのか解らない囁かな問答をして、紅茶のようなものを振舞ってくれた優しい子。僕の体は外から何かを受け入れるように出来てはいなかったし、この世界のものを取り入れるなんて出来なかったけれど。
「……女王くらい、作り上げてみせてよ」
 侵略し、寄生した奴らが作り上げる何か。僕の情報にある女王は、まるで昆虫のように変化していた。夢を喰う虫だ。
 侵略者とは別に、世界を脅かす存在として僕を送り込んだ人たちの間では今問題になっているらしい。取り除けるようなものかも解らず、世界自身の仕組みの一部かもしれない。要するに、バグのようなものらしい。侵略者がウィルスならば、夢を喰う虫のようなあれはそれが生んだバグ。
 そんなものを生み出して欲しかったなんて怒られるかもね。でも僕に設定された行動に虫の削除なんて無いんだから仕方がないじゃないか。
 ただ世界を元に戻すだけの仕組みに感情を与えた人間達の落ち度じゃないか。
 にやり、ハート型した物体の表面を埋める無数の目がにやりと笑った。
 ふと、気付く。クナイを強く握りしめていたらしい。掌が少し痺れていた。胸の奥に、苛立ちが掠める。
「君たちのせいだからね」
 何度もそうしてきてすっかり慣れた動作で、僕は赤いその物体をクナイで刺し貫き切り裂いた。
 単なる腹いせと自分の役目がこうも合致する瞬間なんて、そう経験できないんじゃないだろうか。清々した、と言うにはまだ少し胸のつかえはとれないけれど、いいとしておこう。これでこの世界での僕の役目は終わったわけだ。この世界の侵略者は削除され、僕は次の世界に移る。そして僕がどうしようもない敵と出会うまで繰り返すだけ。
 次はどんな世界だろう。誰の夢だろう。
 あの優しい女王様は、世界が元に戻った後助け出されその夢を喰う虫としての力を失わされ、ただの女の子として育て直しているらしい。ならば、いや、まさかね。
 でももしかしたら、彼女が再び夢を見る日は来るんじゃないだろうか、なんて。そしてその夢に、僕がまた行けるんじゃないかって。
 薄暗い希望を抱いている自分がいる。
「ああ、早く」
 早く、いつか、今すぐにでも。
「君の世界が」
 君の夢が。
「芽吹くのを待っているよ」
 歪な茸に寄生される日が訪れますように。
 






002

 最近変な夢を見る、のです。独白である日記まで敬語である必要はないと思うですがこれも練習ですか?
 変な夢を見るのです。それは二つ。
 一つは眠っている間のことです。おそらく眠っている私は、必ず夢を見ます。その内容は「学校」だったり「森」だったりしますが、すべて同じ場所なのです。それら様々な場所が内包された、同じ夢を見続けているのです。そしてその夢は、それ自体が実在する場所のように、いつ見ても不変な繋がりを持っているのです。夢ならば、日によってばらつきがあってもいいだろうに。
 もう一つあるです。それは白昼夢。内容は覚えていません。でもそれはまるで現実のように、夢と現実が入れ代わったように、思わせるです。理由はわかりません。
 内容すら覚えていない。本当に夢を見ているのかもです。しかし、こちらが夢なのか現実なのか、時折、不明になります。

 本日の授業は理解できました。

 本日の日記は以上です。


「……退屈」
 声に出したところで現状は不変。訪問者は皆無。自室は閑散。こんな時は夢を見るしかないのだと思考し、私は平時の夢を回想し嫌気を覚える。
 私の夢にはユメクイムシがいるからだ。虫は嫌い。しかし、娯楽のない睡眠と休息の為だけの自室は夢を見ることを推奨する。
「憂鬱……あーあ」
 更に、学校の夢も見る。曰く、私はあまりにも不良な存在だった。お札付きの悪ということらしい。故に、更生のため単独の就学を義務付けられた。これは聞いた話だけど。
 学校は好きじゃない。更生されることは、好きじゃない。
 悪であった自覚も記憶もないのだけれど。
 ああ、こんな思考が露呈したら危険。危険なのに。
 また、ここから出られない日々が延びてしまう。単調な日々が延長してしまう。
 起きていれば学業を、眠っていれば楽しくもない夢を見て、昼夜も問わず精神を削る日々。
 楽しいこと、ないかな。
 楽しい夢を見たいな。




※クロスオーバー


003


 見付けられましたか、と青い男性が発言した。
 歓迎するぞ、と似た色の女性が笑顔を形成した。
「ようこそ、共通夢世界へ」
 冷静そうな男性と熱血そうな女性の二人は言い、一礼する。私は困惑し、とりあえず辺りを見渡した。今まで見たこともないような場所だった。空は高く青々とした快晴、地を見れば森に街に何らかの施設にと多種多様。
 私はいつものように、やることがなくなった末に就寝した。そしていつものように変わりない夢を見て、適当にある扉を潜ったらこれだ。これは夢だろうか、今までにないものであることは明白だ。
「夢、です?」
 私の問に答えたのは青い男性だ。
「夢でございます。正確には時も空間も問わずにありとあらゆる次元の夢が繋ぎ合わさった空間であり、ただ一人の夢と異なり他者の出入りも頻繁な、夢の中に形作られた一つの世界です」
 すらすらと淀みない言葉は爽快ですらある。
 私は頷いた。
「私はここにいても損害ないです?」
「この場所に訪れた時から貴女様は住人の一人と、認めさせていただきます。どうぞごゆるりとこの世界を満喫してください」
 慣れきった定型文を口に出しているかのよう。それは私を歓迎する言葉で、嬉しいのだけれど、慣れていないこちらは同じように返せない。それが歯痒い。
「……ありがとう」
 だから、何とかこれだけを口にすると熱血そうな女性が待ってましたとばかりに男性を押し退けた。
「突然なことで戸惑うかとは思うが、ようはいつも見ている夢に他人が居るってだけだ! 身構えず、気楽に過ごしてくれ。目覚めることも自室に行くことも普段のように行えるからな」
「はい」
「私達は夢警備員と呼ばれる存在だ。君は、現実でも夢警備員とは関わりがあったのだったかな? そちらとは同じようで別物なのだ、混乱しないようにお願いしたい」
「承知です」
 こちらの女性は、明るい。先程の静かな男性との対比はまさに黎明。太陽のよう。
「さて、君に対する制限は特にないわけだけれどどうするかな?」
「少々、散策するはいいです?」
「勿論! この素晴らしい夢世界を是非ともじっくり見て回ってくれ! ああ、向こうにある広場なら人も多いしおすすめだ!」
「はい」
 私も一礼。彼等から視線を外し、背筋を伸ばした姿勢で歩く。人前での歩き方はこれだと教えられた通り。
 ……こんな会話が聞こえてきた。

「……なあ、先代」
「何でしょう」
「いいのか、あいつをここに招いて。もしかしたら、ここも私たちの夢みたいに」
「問題ありませんよ、今のところは。現在のお札付き様は可憐な少女です。それより心配なのは」
「心配なのは?」
「MARK様ですかね。彼女と出会えて冷静でいられるでしょうか、心配ですから見て参りましょう。心配ですから」
「……楽しんでるな?」
「ええ、勿論」

 私は耳がいい方だ。多分、間違いはない。お札付きとは、私のことだ。お札付きの悪だった私の今の名前。何故周知されているか、それは夢であるからだろう。ここは初見だけれど私の夢だ。
 MARKって、誰だろう。
 聞いた覚えは、ない。でもその言葉の響きに、違和感は感じなかった。私の周りにはいないイントネーション。
 MARKって、誰。

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【S//D】※桑女王転生説続き【obox】
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004

 今日の共通夢世界は清々しいまでの晴天だ。どこまでも青色は広がっているし、そこには一つの白もない。嫌味なまでの青色。
 緊急時集合場所に指定されている真っ白な広場は、いつもならはしゃいでいる子供達がまだ眠っていない時間なのか誰もいなかった。そこに僕は一人、ぼんやりと座って度のキツすぎる眼鏡越しに空を見上げている。それには何の意味もない。珍しく、役目から解放された時間。
 色んな夢を渡って、そこの侵入者を削除し続けるのが僕の唯一にして絶対的な役目であり存在理由。もっと言うなら生まれた理由。だから僕は、延々と終わりなんてなさそうな戦いを繰り返している。この夢世界は、その中で偶然見付けた抜け道だ。絶好のサボリポイント、だろうか。別にここに定住して役目から逃げ出そうだなんて思ってないから、誤解して欲しくはないけどさ。
 人の夢にいながら人と会話しない日々は、嫌だったな。この夢世界で、寄生されていない夢の主と会話することが可能になったのは、僕の精神安定上非常に嬉しい。
 いや、別に寂しかったわけじゃないから、そのところは誤解してほしくない。特にあの、こちらの世界の夢警備員二人は。
 知能と人格が搭載されて感情を持つ僕は、一般的な人間と同じくらい他人との接触が必要なんだ。それは生物に限りなく近いものとして当然だし、むしろ誇りにすらなるはず。
 ……初めて会話した人間に、未だに感傷を抱く程度には、僕は人間だ。
 あの時僕は、嬉しかったんだろう。侵入者を削除するため、世界の構造を把握し、残されたデータを回収していった単調な作業の中、初めて人間らしさのある存在と出会い会話できたから。会話できて、意思疎通できたことで、自分がきちんと人間に近い感情や知能を持っていると認識できたから。自信がついたから……認められた気がしたから。
 話す相手が、人間と少し離れた容姿になっていたとしても。
「一人」
 耳鳴りが聞こえる静寂に声が生まれて、僕は緩慢な動きでその声の主を探すため頭を下げた。
 誰だろう、女の子の声。酷く無感情な、平坦な声。
 視界を動かしピントを合わせて彼女を一目見た時、世界が歪んだ。僕は目を見開く。
 そこにいたのは少女だ。ただの、平凡な。
 柔らかな黒髪は記憶のまま、その中から伸びる長く細い角は二本とも失われてしまっているけれど、代わりに純白のリボンが動物の耳のように高く立っている。
 背に負った昆虫のような翼もない。
 赤かった片目は紫に近い色になっている。
 不敵な、しかし寂しげで妖艶な笑みは消えている。
 僕が思い浮かべるのは夕暮れの赤が似合う彼女だったのに、今僕の前に現れた少女はその対極だ。この空と地面の真白が異様に似合う少女。
 そう、僕の記憶にある人物とは何一つとしてその特徴を残していない。全く異なる姿。なのに。
「君、女王様……?」
 僕の思い浮かべる、かつて僕の役割を果たす最中救うことの出来た少女にそっくりだと思ってしまった。桑の女王と、虫の女王として存在し、僕とお茶を飲み交わした、彼女と。全く違う。別人のように見えるのに。
 まさか。
 まさか、遂に彼女も。
 少女は表情を動かさない。顔の筋肉を動かす方法を忘れてしまったかのように、無表情で、しかし確かに小首を傾げた。疑問を僕に伝えるために。
「女王、違うです」
 ああしまった、保護された彼女は記憶を失っているんだ。もしくは消されているんだ。夢の世界は人の精神世界、そこに侵入者が現れるなんて誰にも知られてはいけないから。だから、彼女はもう特殊な夢とは縁遠いただの人になった。
 だから、僕は彼女に何も伝えることは無い。何も言うことは無い。覚えていないのならば、別人として扱うのがきっと正しいじゃないかい?
 また一から、出会い直す。そうすればいいだけ。今度の君はどんな人か僕は知らないし、君も僕のことなんて知らないから。
 それは別に、寂しいことじゃないさ。そう、誤解したらいけない。新しい出会いは覚悟していただろう?
 だから。
「……貴方が、MARK?」
 覚悟を決めた僕が、どんなはじめましてを言おうかと悩んでいたら彼女は言った。
 ああ。
 ……ああっ!
 なんで君はそうやって名を呼んでくれる。どこでその名を知ったんだい。どうして、どうしてその名が僕のものだと解ったんだい? どうして、ああ、もうそんなことはどうでもいい!
「ねぇ!」
 ただ呼びかけただけ、それなのに思ったよりも大きな声が出た。彼女の肩がびくつく。僕は少し自分を落ち着かせて、ふぅと息を吐く。
 ああ、息が震える。緊張なのかな、それとも他のなにかかな。
「お茶会をしよう、女王様」
 震える声で言うと、視界が大きく歪む。目になにか入ったみたいな感覚から目を擦ると、眼鏡が邪魔になったから外した。
「今度は二人きりじゃなく、皆で。ここは沢山人がいるんだ。だから、皆で楽しめる」
 言い切った後、目を擦った手の甲は濡れていた。透明な液体で。
「流涙、笑顔、どちらです? 不思議な表情」
 返事の代わりに彼女から投げかけられたのはそんな疑問だった。ああ、僕は泣いていたのか。
 胸が痙攣して、啜り泣くように息を吸う。そんな乱れた呼吸の中で、答えを口にする。
「解らないけれど、多分僕は」
 僕は。
「今、すごく幸せを感じているんだ」
 泣いているのか笑っているのか、何の涙なのか、僕には解らない。僕には解らない。
 でも今とても、目の奥と、胸の奥がひたすらに熱いんだ。
 これはきっと、幸せってやつだろう。









MARK「べ、別に君と会えて嬉しかったとかじゃないからね!? 誤解しないように! ただその、そう、僕は思い出を大切にしているだけさ! 君だからどうこうってわけじゃないからね!」

お札付き「承知です」

MARK「ま……ちょっとくらいは……勘違いしてくれてもいいけどさ」

お札付き「はい?」



たかし「……惜しいですね」

ふねつき「ヘタレだなぁMARK……」

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