キリリク小説
□心から…【七×啓】
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「一体何を思い出して笑っていたんですか?答えによっては、僕は妬いてしまいます」
「そ、そんなの…!っ、七条さん…のことですよ…」
ハッキリそう言うのが恥ずかしくて思わず語尾がごもってしまう…
「おや、それは嬉しいですね。でも、そんな可笑しなことなんてありましたか?」
「可笑しかったっていうか…」
嘘ついても、しょうがないよな……
そう思った俺は、正直に胸の内を語ることにした。
「昨日のメールのやり取りを思い出していたんです。なんでわざわざ寮じゃなくて駅に待ち合わせ場所を選んだのかなって思って…」
「何故だと思います?」
「わかりません。でもきっと七条さんのことだから、何かあるんだろうなって思って」
「おや…」
「きっと俺じゃ考えもつかないようなことなんだろうと思って、諦めていたところでした」
「ふふ。なるほど。伊藤くん、君は可愛い人ですね」
可愛い…のか?
という疑問はさておき。
もうこの人にそう言われるのも慣れてきてしまった。
俺はとりあえず頬をポリポリと人差し指でかいた。
最近和希のくせがちょっと移りつつある……。
「結局、理由はなんなんですか?」
「知りたいですか?」
「えぇ…」
「内緒です」
「もう、またそうやってはぐらかす」
「そうですね…では、“まだ君の知らない一面を知りたくて…”とでも言っておきましょうか」
「まだ知らない俺の一面…?」
ってことは…つまり……
「やっぱりどこかに隠れて見ていたんですか?」
そう尋ねると七条さんはただニコッとだけ笑った。
「伊藤くん、お昼ご飯でも食べに行きましょうか。お腹、すいてるでしょ?何がいいですか?」
「………」
また、はぐらかされた…
でも、七条さんは何故かすごく楽しそうに笑っていて…
なんかもう…
どうでもいいやって気分にさせられる。
「七条さんの食べたいものでいいですよ」
「じゃあ、僕は伊藤くんが食べたいものがいいです」
もう、ほんとにこの人は……
「んん〜〜じゃあ、中華で!」
「いいですね。丁度気になってたお店があったんです。こっちですよ」
そう案内されるままに俺達は足を運んだ。