キリリク小説
□気になる奴等【中×丹】
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◇◇◇
「王様どこ行ったんだろうね」
「こんな広い敷地内で探すっていうのも案外無謀だよな…」
ぼ〜っと青い空を見ていると、しばらくして馴染みのある声が聞こえてきた。
ふと見下ろすと、啓太と遠藤が歩いて来るのが目に入った。
話題の中に自分がいることで、無条件でヒデの差し金ということがわかる。
今回はこいつらが俺を探し廻って歩いているらしい。
ご苦労なことだ…。
だが奴らもまさか俺が木の上にいるとは微塵も思っていないようで、見向きもせずに俺の下を通り過ぎていく。
俺は二人をそっと見届けた。
が、
視界から外れるか外れないかのところで、啓太が偶然にも歩みを止める。
「?啓太どうした?」
遠藤が疑問を投げ掛けると、啓太は眠気を追い払うように腕を高く上げて伸びをした。
「ふぁ〜〜。んん〜今日は風が気持ちいいから、王様がサボりたい気持ちもちょっとはわかる気がする」
啓太がいたずらっぽく笑いかけると、遠藤は優しく微笑み返す。
「はは。俺らもサボっちゃう?」
「中嶋さんに怒られるよ?」
「でも俺ら正式な役員じゃないし、多少は許して貰えるよきっと」
「でも…」
悩む啓太に反して遠藤は己の欲望に甘い。
ヒデが相手でも軽くかわせるあたり、中々の大物だ。
俺が言うのもなんだけど…
「はは。ま、いいからいいから。啓太。こっちこっち…」
そう言って遠藤は木陰に啓太を引っ張り込む。
かろうじて視界に映るその光景に、俺は少し焦りを感じてきた。
こいつらが仲が良いのは重々承知。
日頃から頻繁に生徒会の手伝いをしてくれているので、その二人のやりとりを目にすることは決して珍しいことじゃない。
だから慣れてはいるつもりだ。
けれど、ひとの目のあるとこ・ないとこではやはり行動パターンも変わってくることだろう。
手を繋いだり、遠藤が啓太の頭を撫でてからかっている様子くらいなら、今更驚きはしない。
だけどもしそれ以上となるとさすがに…………