キリリク小説

□仕掛人【丹×中】
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それに加えて、一向に緩める気のないこの腕をどうにかしないか…!

俺は小さく身じろぎをする。
咄嗟の行動で防ぎ切らなかったとはいえ、両腕まで封じられてしまうとは、不覚だった‥。

「自分から出てくるとは良い度胸だな」
「お前が来るまで逃げ回ってやろうかと思ったんだけどよ、折角来たのに帰ろうとするんだもん。そりゃ止めるっしょ」
「フン、黙ってれば逃げ切れたかもしれないのにな?」
「それじゃつまらないだろ?」

つまるかつまらないかの問題なのか、こいつにとっては…
それに付き合わされる俺の身にもなれ。バカバカしい…

俺は小さくため息をつく。
こいつのお遊びに付き合ってる間にどれだけの仕事が片付けられたかを考えると、いつものことだが非常に損した気持ちになる。
今日はたまたま早くに見つかったからいいもの、やはり無駄に使わされた時間の分だけは働いて貰わなくては性に合わない。

「戻るぞ。いい加減この手を離せ」
「ん…そうだなぁ。あ!?なぁなぁ、ヒデあれなんだ?」

何かを見つけたらしく、丹羽が左方向へと指を指す。
俺はその方向に従って顔を向けた。

「一体な…!!」

しかし振り向いたのと同時に丹羽の顔が覆い重なる。
逃げるよりも先に唇が塞がられた。

「ンッ…」

丹羽の右手に頭を押さえ付けられ、思うように拒むこともできない。
その間にも口の中に丹羽の舌が割って入ってくる。
ねっとりとした感触に、一瞬受け入れてしまいそうになるも、俺は両手でヤツの体を突っぱねた。

「っ、何のマネだ」
「まさかこんな古い手にお前が引っ掛かるとは思わなかったぜ」
「何!?」
「まあまぁ、そう怒るなよヒデ。機嫌直せ、な?」

丹羽はニカッと人懐っこい笑顔で笑ってみせる。
だが、どんなに可愛く言ったとしてもお前じゃ尚更可愛くない。

「余計に気が削がれた」

こいつの突拍子もない行動には正直疲れる。
最近は何かと余裕な表情を見せるようになり、人懐っこい性格に加えて、過剰なスキンシップが目立つようになった。
俺にも、そうでないヤツにも…

だからってそれがどうしたかと聞かれてしまえば別にどうってこともないのだが、こいつのペースに乗せられてしまう自分というのは、なんだか面白くない。
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