小説(短編)A
□お前の形【中×丹】
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不本意にも、俺の心臓は激しく波打つ。
冗談なのだろう…と半信半疑な眼差しでヒデを見る。
だが、ヤツはひどく真っすぐな視線で俺を見下ろしていた。
「あいにく欲しいものがなくてな。強いて言うなら、欲情できるお前の体なら申し分ない」
「な…!」
な…な……
よく恥ずかしげもなくそんなセリフ…!
俺は何も言えず言葉をつまらせる。
そんなことになったら俺の体が大変なことになるじゃねぇか…!
それは勘弁願いたい。
でも…
嫌な予感は拭いきれない。
「い、いや…俺としてはやっぱ形に残るものを渡したいっつーか…」
「形?…フッ、なら写真にでも納めておけばいいだけの話だ」
「しゃ、写真!?」
「問題ないな?」
「も、問題あり!大有り!!」
俺は必死に反論した。
しかしヒデの腕がそうすることを許さない。
俺の両腕をシーツにしっかりと押さえつけている。
いつもだったらこんな時、全力で阻止してる。
しかし今日は何故かそれが出来ないでいた……
それはきっと、俺の中で迷いが生じているせいだ。
“…哲、お前がいい…”
先程のセリフが深く胸に突き刺さっている。
もともと今年はヒデの欲しいものをプレゼントしようと決めていたし、それを断言されてしまっては他に何をあげても納得してくれそうにない。
それに…間違いなく喜んでくれそうだ………
でも…
お、俺……!?
どんな無理難題を押しつけられるかわかったもんじゃない。
いくらなんだってそこまで俺が犠牲になる必要もないハズだ…
ただ……
好き合って付き合っているのだから、その“これから起こるであろう行為”全てが苦というわけでもないのが本音…
…。
もはや、選択肢はないような気がしてきた…
でも、ひとつだけ
譲れないものがある…。
「………しゃ、写真だけは……勘弁」
「!」
目を反らして言った俺のその一言に、ヒデは一瞬きょとんとしていた。
だがすぐ様またその口元に笑みをつくり、笑いが口から漏れた。