キリリク小説
□心から…【七×啓】
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2月〇日(日)晴れ。
日差しの温かな天気となった。
しかし時折吹き通る風はまだまだ冷たい。
今日は、大好きな人と街へ出掛ける。
今、まさに待ち合わせの場所へと向かうところだ。
きっとあの人のことだ、待ち合わせ時間よりも早めに到着しているに違いない。
俺は、待たせないようにと、少し足早に歩行を進めた。
◇◇◇
待ち合わせの駅に着いた。
入り口前の階段って約束だったんだけど……
まだ、彼の姿は見当たらない。
良かった…。
待たせないで済んだみたいだ…
少し忙しなく弾む呼吸を整えながら、俺は腕時計に目を落とす。
予定より20分早く着いたようだ。
「ふぅ…」
こうして街に出掛けるは久しぶりだな。
さすがに日曜日ってこともあって人通りが激しい。
思わず行き交う人達の姿を目で追ってしまう。
会話に弾む女の子達のグループや、カップル、はたまた日曜日だというのにスーツを着こんだサラリーマン風の男の人が忙しなく時間を確認しながウロウロしたりしている。
ホント、人それぞれだ。
「ごめ〜ん、待った?」
「!」
突然後方から女の人の賑やかな声が響いてきた。
どうやら彼氏と待ち合わせだったようだ。
「お〜待った待った。40分も」
「ごめん!反省してます!許して下さいっ」
「お前それ何回目だよ?全然反省してない!」
「してるしてる!あ、もうお昼だよね?お腹すいたでしょ!?何か食べ行こう!お詫びに奢ってあげるから、ね?ね?」
「調子良いなぁ〜ったく…」
「行こ行こ♪」
「……」
別に盗み聞きするわけじゃなかったけど、何気なくそんな二人の会話を聞いていた。
彼女…か…
数年前の自分なら、今みたいなシチュエーションを夢見ていたんだろうが…
今の俺は少し違う。
でも全てが違うわけじゃない…
大好きな人との待ち合わせ。
休日のデート。
やっていることはほとんど一緒…
けど、不思議な気持ちが残るのは、正直なところ。