キリリク小説

□素直になれなくて【成×遠】
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素直になれる薬があるという…
それを飲んでしまえば、自分の意志とは反して本心が現われるのだそうだ。

啓太のような裏表のない人物ならそれを飲んでしまったところで何も変化はないのだろうが……

俺は…




もしそんなものが本当にあるのだとしたら、絶対にお目にかかりたくはない。


だって俺は…



嘘の塊のような人間だから……………



◇◇◇

啓太が王様と付き合い始めて…
俺は一定の距離を置くようになった。

今でも啓太への思いは変わらない。
こんな状況で…
側にいれるハズなんてない。

だけど啓太は、そういう気遣いは嫌いらしく…
“今まで通りに接して貰いたい”
のだそうだ………



こんな…
俺の気も知らないで……


確かに、言いたいことはわからなくもない。

俺だって…なんだかんだ言っても、何気なく啓太の近くにいてもおかしくないこの『親友』というポジションはおいしいと思う。

呼ばれればすぐにでも飛んでいくし、そうでないのなら遠くで見守る。

それだけのことだ………



‐放課後‐

授業が終わり、それぞれが放課後の時間へと足を運ぶ。
大して用もない俺は、この時間になると気紛れな猫のように学園内を彷徨う。

啓太と一緒に生徒会の仕事を手伝うこともあれば、手芸部に顔を出すこともある。
何もする気になれず屋上でぼぉっとしていることもあれば、なんの拍子もなく会計の人達や海野先生に捕まり手伝いをすることもある。

要は気が紛れるものならなんでもいいんだ…

あとはあの人にさえ会わなければ…………



「やぁ、啓太!」
「成瀬さん!」

うわ…
言ってる側からなんか来た。

教室で荷物を整えているとその人物はやってきた。

この人も俺と同様、啓太にふられたわけだが…
啓太が『今までと変わらず接して欲しい』とこの人にも伝えてしまったもんだから、こうして図々しく部活の前によく啓太に会いに来る。
だから俺も嫌でも会ってしまうんだ。


本当は関わりたくないのに………
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