キリリク小説

□君以外いらない【成×啓】
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今日は、他校とのテニスの練習試合を見に来ていた。


え…………1人でですけど。
何か?



もちろん、お目当ては成瀬さん。
ホントは誰か誘いたかったけど…誰にも声を掛けることが出来ず…
今に至るわけで。

今日来てることは本人にも知らせてはいない。

もちろん、誘いは頂いたんだけれど…


『ごめんなさい…その日は用があって………』


何も用なんてないのに、戸惑いが強くてそう断ってしまった。
今日も、本当は見に来るか来ないかギリギリまで悩んでいたんだけど…
結局、気になってこうして来てしまった…。

ここはBL学園と他校の調度中間距離くらいにあるグラウンド。
天候にも恵まれ、予定通りにテニスの試合は開催されている。

ただの練習試合だというのに、コートの周りを囲むフェンスの外は相変わらずのすごい人だかりだ。



「キャ―!成瀬さ〜ん!」
「成瀬さ〜ん!!」


女の子達の黄色い声が飛びかう。
みんな成瀬さん目当てで来ているみたいだ…


さすが…人気者だ………


俺は段になっているベンチの中央部の一番隅っこに腰を下ろした。

端から見たら、ただの通り掛かりに物珍しさで覗きに来ただけのただの見物人…
に、見えなくはない。


だが俺は…それくらいで調度いい……





成瀬さんと俺は付き合い初めて間もない。
いや、俺としてはまだ恋人と呼べる存在に至っていない。

だから…

どうも気持ちが中途半端だ。



事のなりゆきを説明すればその安易さがわかる。

そう…あれは確か調度1週間前……





いつものように成瀬さんは俺の分までお昼ご飯のお弁当を作ってきてくれて、それを食しながら他愛ない話をしていた。
そしたら、急に成瀬さんが真剣な顔をして………

「ねぇ、啓太。僕と付き合って貰えないかな?」
「…?いいですよ?」



そう答えた。

俺は、どこか買い物か何かに付き合って貰いたいってことかと勘違いをして、あっさりとそう返事をしてしまったんだ。

しかしそのあとの成瀬さんの喜びようが半端じゃなくて…


「本当かい!?あぁ〜〜〜良かった。嬉しいよ啓太、愛してる!!」

そう言ってギュウ〜…っと………………


俺は思わず目が点になってしまった。
そしてようやくそこで気付いたのだ。
あれは恋の告白だったことに………




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