小説(短編)

□逃げないで【トノサマ×丹羽?】
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とある日の放課後‥

―海野研究室―
ぼわんっ

謎の液体と液体を混ぜ合わせた途端、絵に書いたようなドーナツ型の煙が巻き上がった。少し煙たそうに咳込みをした後、聡は歓喜の声をあげた。

「できた〜!!」

どうやら実験に成功したらしい。今回はどんなものつくったんだろ?

「ぶにぁ!」
「トノサマ、来て来て」
「ぶにゃ?」

呼ばれたままに聡の側に歩きだす。聡は俺の目の前に試験管に入った赤い色の液体を差し出す。

え、まさかそれって…

「トノサマ飲んでみて?」

えっ!?
俺、実験台!?
うぅ…なんか不味そう…

「大丈夫だよ、トノサマ。体に害はないから」

そういわれてもな…
そもそもコレなんの薬品なんだよ、聡?

「うにゃお…」
「それは内緒☆飲んでからのお楽しみ♪ほら、トノサマ早く早く!」

う…聡の笑顔が眩しい…
俺、この人の笑顔には弱いんだよな…
もう‥仕方ないなぁ……

俺はおそるおそる聡の持った試験管の入り口に顔を近付ける。
まず匂いを嗅いでみる。
クンクン‥
うん、嫌な匂いはしない。これなら飲めるか?

「トノサマ入れるよ、口開けて?」
「にぁ〜〜」

赤い液が俺の口の中に広がる。
お?そんなに不味くないなコレ。

次の瞬間、俺の体は大きく揺らいで、見る見る視界が高くなった。
気付けば俺は二本の足で立っていて、人間と同じ腕と体…
まさしく人間の姿そのものに変わっていた…
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