小説(短編)

□手錠【中×丹】
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ジャラ…

寝返りをうとおうとした際、己の左腕に違和感を覚えふと目を覚ます。
その先に繋がれていたものは他人の右腕。
もう3年近く見尽くしてきた顔。この学園の王と呼ばれるものの存在がそこにはあった。
目を覚ました俺の様子に気付くこともなく、安らかな寝息を立てている。
デカイ図体に似合わないガキ臭い寝顔。昼間の様子からすると想像もしない、その多少なりと幼さの残る顔を見て、俺は一人笑みを漏らした。


この腕に繋がれた鎖は言わば手錠。
本来なら罪人や容疑者の手にはめられるもの。
お前にならお似合いだろうと思っていたのだが…


『それ言ったら絶対お前の方が似合ってると思うぜ!?』


お前がそんなこと言うもんだから、不意打ちだったが何故か俺まではめることになった。
繋がれた右手と左手。
自由な手があるのだから外そうと思えばいつでも外せる。
そうしないのはきっと…

お互い己のみだけが知っている答えなんだろう。
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