小説(短編)

□桜日和【和×啓】
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ひとつ、

花びらひらり…

またひとつ

またひとつ………


‐休日‐

特に予定もない休みだった。部屋の窓を開けると、春の風がとても心地よく頬を撫でて行った。
外では桜が満開に咲き乱れ、優しい風に揺られながらこちらに手招きをしているようにも見えた。
気づけば俺の足は無意識に動き、手招きされた桜の木の下へと訪れていた。

「わぁ…」

ため息に近い声をあげ、淡い色によく合った青い空を眩しげに見上げた。
桜にはいろんな思い出がある。小さい頃家族と一緒に見に行ったこととか、学校での先生や先輩・後輩との出会いと別れ。
友達と大はしゃぎしながら見に行った夜桜とか。
ホントいろいろ…。

楽しかった記憶

痛いくらい悲しかった思い出

たくさんの思い出が、みんなみんなこの桜の中に……

あの人に出逢った時も、確かこんな優しい風が吹く季節だったかもしれない。
桜はもう咲いていなかったかもな…。

そう、あれは確か…………
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