小説(短編)
□名もない気持ち【七×中】
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放課後‥
授業を全て終え、そのまま会計室に足を運ぶつもりでいたのだが、途中忘れ物があったことに気が付き僕は寮へと進行方向を変えた。
これからの予定を頭の中で整理しながら歩いていると、校舎を抜け出したその途中、不覚にも眼鏡を掛けた生徒会関係者に遭遇してしまった。
僕は仕方なしに声を掛ける。
「おや、中嶋さん。今日も会長とかくれんぼですか?毎日飽きずにご苦労様です」
「そういうお前は犬らしく放課後の散歩か何かか?時間を持て余しているとは羨ましい限りだな」
「そう見えますか?まぁ、そういうことにして頂いて構いませんよ。言ってもわからない人に話す言葉はありません」
僕はにっこりと微笑む。
「それはこちらとしても同じ意見だな。今以上に“無駄”という言葉がふさわしい程の時間はない」
「なら早々立ち去りますか。僕もこれ以上なんの得にもならないくだらない話は御免です。では」
僕はそう告げると中嶋さんに背を向けて歩き出した。
「オイ、待て」
だがすぐに呼び止められてしまう。
「何か?会長なら見てませんよ?」
「誰がそんなことが聞きたいと言った?貴様、昨日はよくも…」
「あぁ、アレですね?気に入って頂けました?」
僕は中嶋さんの言葉を遮ってそう告げた。
昨日はちょこっと中嶋さんのPCにお邪魔して細工を仕掛けておいたんです。
早くもその存在に気付いて頂けたようで、何よりですね。
……ということは、今彼のPCはウンともスンとも言わない状態でしょうか。
おやおや可愛そうに…
「あまり過ぎた悪ふざけは控えて貰おうか。セキュリティもバックアップ対策も万全だが、毎度こんなことされては面倒だ」
「喜んで頂けて光栄です。ですが一時的なものなので安心して下さい。きっと忘れた頃に治っているハズですから」
「フン、あとで痛い目みるぞ?」
「そうですか、それは楽しみですね」
僕は笑顔でサラリとかわす。
しばし二人で微笑バトルを続けていると、突然前触れもなく上部の方で誰かの叫ぶ声が響いた。
「危ない!!!」
!!!
振り向くより先に中嶋さんの腕が伸びてきて、僕の体を跳ねとばした。
その直後、
ガッシャーーン!!!
という、けたたましい音が鳴り響き、起こった現実が把握出来ずに僕はしばらくその場に立ち尽くしていた。