小説(短編)A
□俺のもの【丹×中】
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ボールの弾む音が響く体育館で事は起こった。
それは体育でのバスケット……
「そっち行ったぞ!」
「!」
別に張り切って参加しているつもりもなかったが、たまたま自分の方へボールが飛んできたためそれをキャッチしようとした。
その時…
「させるか!」
「っ!」
ディフェンスに来たクラスメイトの体と接触し、運悪く俺は眼鏡を床に落としてしまった。
そしてお約束なことに…
パキッ…
「え!っうわ!ウソ!?ごめん、中嶋!!」
そいつは見事に俺の愛用の眼鏡を踏み付けてくれた。
もちろん、意図的でないのはわかってはいる……
これは事故だ。
しかし勢いのままに踏まれたそれは無残にもレンズにひびが入ってしまっていた。
「ご、ごめんな?俺弁償するから」
「いや、いい…」
替えの眼鏡なら寮に行けばある。
だが些か気分を害した俺は、さすがにこのまま試合を続けるつもりは更々なかった。
視界が悪いことを理由に先生に断りを入れると、適当に試合から抜け出した。
本当は支障のないくらいには見えているのだけれど………
丁度良い口実に………
◇◇◇
「大丈夫か、ヒデ?」
「何がだ?」
休み時間になるとすぐ様丹羽が飛んできた。
人の心配をしていると思いきや、その顔は人の不幸を楽しんでいるかのようにニヤニヤしている。
「何って眼鏡だよ眼鏡」
「見ての通り使い物にならない」
「替えあんだろ?」
「寮の部屋にな」
すぐに取りに行こうかとも思ったが、それなりに距離もある。
行って帰って来たら休み時間なんてあっという間だ。
だったら別になくてもいい。
それほど困るものでもない…
「悪気があってやったわけじゃねぇんだ、あんまり怒んなよ?」
「怒ってなどいない」
「そうか?なんだか周りがピリピリしてっからよ」
そんなの、俺の知ったことじゃない。
勝手にピリピリしてればいいさ…
「あ!目が見えないんじゃ、今日は生徒会の仕事も休みかな〜?」
わざとおちゃらけたようにそんなことを言い出した丹羽に、俺は睨みをきかせた。