小説(短編)A

□太陽のような人【啓→丹】
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あの日から、体の火照りが止まらない。

あれは夢だったって、ずっと言い聞かせているのに…

夢じゃなかったことを実感してしまってから、ずっと気になっている。

意識してしまってる、

王様のこと………

これがどういった感情なのかは、

わからないけど…

◇◇◇

「はぁ〜」
「何そのため息」
「ん…ちょっとね」

昼休み、俺は力なく机に伏せっていた。それを見ていた和希に声を掛けられる。

「啓太、ご飯どーする?」
「ん〜」

学食はあの人がいそうだし、なんとなく外の空気が吸いたい…かも…

「購買で何か買って外で食べたい…」

俺は伏せったままそう呟く。

「OK。でも早く行かないとなくなっちゃうぞ?」
「うん…」

俺は重い腰を上げると、和希に引っ張られながら購買を目指した。

◇◇◇

適当に食べたいものを選ぶと、俺達は屋上に足を運んだ。
誰にも邪魔されないちょっとした穴場がある。
それは出入り口の頂上。
備えついた小さな梯子を登って、俺達はそこに腰を下ろした。

買ってきた焼きそばパンのビニールを開けると、無言でかぶりつく。
美味しいけど…なんかいつもより味気ない。
卵サンドの方が良かったかな…
そんなことを淡々と考えていた。

それを見ていたいつもより口数の少ない俺に、和希は心配そうな声をかける。

「元気ないな。なんか悩み事か?」
「ん〜まぁ…」
「俺でよくれば聞くけど?」
「…………」


それは出来ない。

和希には、口が裂けても言えない。

だったら、心配されるようなことしなくればいいのにと、自分を攻め立てる。

適当にごまかさないと…

「最近よく眠れなくてさ」
「らしくないな」

和希も買ってきたサンドイッチにかぶりつく。

「夜中に目が覚めちゃうと、中々寝付けなくて…」

まぁ、これは本当の話。
よくわからない夢とかよく見るし…

「ん〜春だからかな〜」
「…なんか関係あるの?」
「季節の変わり目って、そういうのあるよね。気圧の変化で頭痛くなったり、夢にうなされたり」



「和希も夢見る?」
「見るよ。思い出そうとすると忘れちゃうけど」


……和希はあの日のこと、覚えてないんだよね。

なんで俺は、覚えているんだろう。
俺も和希みたいに、キレイサッパリ忘れたかった…
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