小説(短編)A

□子猫なキューピッド【丹中丹】
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それは昼休みの出来事…

滝の噂話から事は始まった。

それは学園の門の前に小さな箱が置かれていたという話だ。
中からは何やらミーミーにゃあにゃあと生き物の鳴き声が聞こえ、恐る恐る開けてみるとそこには一匹の白い子猫が入っていたという。
捨て猫…だろうか。

そんな話を聞いて一目見ようと学園の門に集った輩がいた。
しかしその時目にしたのは皆、空き箱ただ一つだけだったという。
一体中にいた子猫はどこに行ってしまったのだろうか?

誰かに拾われたのならいいが…もしこの学園の敷地内に逃げ込んでしまってでもしたら…………!?



そんな話で、この物語は始まる…───


◇◇◇

「なんだと!もういっぺん言ってみろヒデ!!」

バンッ!!!

大血相を変えて丹羽は目の前の机を思い切り叩いた。
しかし一方の中嶋は真逆な冷静さで眉間に皺を深く刻ませている。
顔には『うるさい』の文字が目に見えない字で刻まれている。

「何度言っても同じだ。そんな噂が流れている。本当かどうかは知らんが…」
「っ〜〜〜」

声にならない声で丹羽はプルプルと震え出した。
いや、もしかしたらブルブルという表現の方があっているかもしれない。
なんと言っても丹羽がこの世で一番毛嫌いしているのは猫とよばれる生きものだ。
たとえそれが可愛らしいマスコット人形でも、はたまた人足を招くとされるあの小判を抱えた陶器の猫でさえも…
ダメらしい。

しかしそれを知っているのはごくわずかの人物だけ。
さすがに学園中にこのネタをバラされては大笑い者だ。
あの生徒の頂点に相応しいとされる生徒会長の丹羽が…!
熊とも互角に戦えそうな程の強さ(?)を持つあの丹羽が…!

■■■■■■■■■
■熊より恐い  ■
■  < 招き猫■
■■■■■■■■■


だから丹羽にとっては今回の噂は非常事態の出来事なのだ。
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