小説(長編)
□側にいてB【中嶋編】
1ページ/8ページ
生徒会室に定期的に響き渡るPCのキーボード音。
俺は一人黙々と作業をしていた。
そう、たった一人で……
丹羽はあいかわらず逃亡中。
最近まではよく手伝いに来ていた啓太も、今はもういない…。
事情は…まぁ、さておき。
俺一人ではいくらなんでも効率が悪すぎる。
ふと窓の外の景色を見やると、空には灰色の雲が敷き詰められていた。
いつ雪が降ってもおかしくないような天気だ。
この寒空の中、どこぞのサボリ魔はよくもまぁ歩き回る気になれるものだとホント関心する。
かと言ってそれも他人事で終われないのも長年の承知。
早かろうと遅かろうといつかは自分も同じ空の下へと出て行かなくてはならない。
「はぁ…」
俺は深いため息をついた。
今日はいつもよりも少し気が重い。
もしかしたら見付け出すのは困難かもしれない。
そう思わせる要因が少なからずある。
あてもなく捜し回るくらいなら、俺一人でも作業を続けていた方が効率が良いことだってあるだろう‥。
だが、俺一人が何故そんな苦労を背負わなくてはいけないのか、それがハッキリ言って面白くない。
やはり探しに行くか…。
そう決意して席を立った時だった。
窓の下に見える道の途中に、見覚えのある人影がこっちを見ていた。
あれは…
俺が視線を向けると、そいつは避けるようにそそくさと歩きだした。
「………」
視線の持ち主は言わずと知れている。
啓太だろう‥
だが、今はあいつの相手をしている場合ではない。
俺は相手にすることなく、丹羽を探しに出掛けた。
◇◇◇
30分探しても見つからなかったら諦めて帰ることとし、俺は校内を捜し回った。
だが30分経つかたたないかくらいになった頃、俺はようやく裏庭のベンチで寝そべる丹羽を見付け出すことが出来た。
「こんなとこにいたか」
「!はぁ、見つかっちまったか。……よくわかったな、俺がここにいるって」
「今回はたまたまだ。そんなことより、仕事だ。戻るぞ」
「俺は戻んねぇ」
いつもなら嘘臭い言い訳を並べるものの、今日の丹羽は冷めた表情で淡々とそう告げた。
明らかに機嫌が悪い。
原因は……やはりアレか。