小説(長編)

□側にいてD【啓太編】
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『俺の我が儘に便乗してみねぇか?』



そんなこと、あって良いのだろうか。
中嶋さんを好きな俺がいて。
王様を好きな中嶋さんがいて。
当の王様は俺も中嶋さんも大事だと言う。

これって、要するに三角関係ってヤツだよな…。
丸く収まる方法なんてある気がしない。

お互いの気持ち知ってて、一緒にいたいって?

そんなの、無理……。


俺の気持ちは中嶋さんに散々伝えた。
ハッキリ断られているし、俺が諦めれば済むだけの問題だったのに…。

なんで……?



生徒会に戻って来てもいいって…
なんで今更………
もう二度と来るなって言われていたのに…。

俺、またわからなくなっちゃったじゃないですか…

なんで中嶋さんの考えが変わったんだろ。

生徒会の仕事を優先に考えたから?
王様の押しに負けた?
それとも…………


……………………………ふられた?

だからって、あの人が諦めるとも思えないし。

俺、どうしたらいいんだろう?




王様からの話はとりあえず保留にしてもらった。
王様が勝手に言っているだけかもしれないし。
ノコノコ顔だして追い出されるのは、つらいし。




「はぁ〜〜〜」


俺は寮の自室のベッドの上で、抱き枕を抱えながら盛大なため息を漏らした。


コンコン、

その時、部屋のドアがノックされた。

誰…?

俺は急いで鍵を開ける。


「中、嶋さん…!」

「話がある」
「……」

顔を見た途端に、泣きそうになった。
今まで遠ざけるような言動ばかりだった彼が、直接出向いてくれたことの衝撃に動揺を隠せない。

何を言われるんだろう…

警戒心に、全身に力が入る。

「お前さえ良くれば、また生徒会の仕事を手伝って欲しい」
「…!」
「丹羽にも散々言われているだろうがな」
「…」

本当、だったんだ…
本人が言ってくれているってこと……

俺は拳にグッと力を込めた。

「……どうして、気が変わったんですか?俺がいたら、面倒でしょ?」
「……アイツの判断に任せることにした。今は生徒会の仕事を最優先に考える。お前の仕事の真面目さは他の誰よりも俺が知っている」
「……」

どうしよう…
なんて答えれば良いんだろう…

俺の本当の気持ちは……………



「…………明日から、待っている」

「ま、待って…!」

言うだけ言って出ていこうとする中嶋さんの腕を、俺は引き留めた。

けれど、言いたい言葉が見つからない。

「っ、」
「……」

俺は掴んだ手をそっと離した。

「いえ、ごめんなさい…」

「じゃあな」


パタン…


静かに扉が閉まるのと同時に、中嶋さんは去っていった。


「……」

“あとはお前が決めろ”

そう言われた気がした。


結局、王様の後押しがあったから来てくれたんですよね…

そう思ったら、急に淋しさが芽生えた。

あまり期待をさせないで欲しい…
一々あなたの言動で、俺は泣いたり喜んだり怒ったり……

答えがわからない。


このまま離れて行くも良し。

生殺しでも側に居させて貰うのも、一つの選択肢。

彼の幸せを願って見届けるのも………また一つの選択肢。


わからない…

どれがいいかなんて、

今の俺には…………………
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