小説(長編)

□側にいてC【丹羽編】
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「冗談………なのか?」

あのタイミングで?

アイツが……??


俺は殴られた衝撃のせいなのか、ガンガンと痛みに響く頭を押さえた。

咄嗟にキスをしてしまったことに驚いているのも、一番は俺自身だ。
ただ、あの時は…あぁするのが一番気持ちを知るのに手っ取り早いと思ったんだ。

そして、わかってしまった気がする。




半信半疑ではあったけど、気付いてしまった。


本当の気持ち。



俺への……気持ち。






俺は散らかったままの室内を見渡した。
ただでさえ終わらない仕事をまた増やしてしまったことに後々後悔する。
手元に落ちてた書類を手に取り、しばし途方に暮れた。

今は中嶋も啓太もいない。
俺一人…

俺のいない普段の生徒会室はどんなものなのだろうかと、ふと考える。

アイツのいない生徒会室は……いつも以上に素っ気ない。
暗いっていうか、
寒いっていうか、
静かすぎて、床に大穴でも空いてるような感じだろうか。



「やるか…」

あいつはきっと戻っては来ないだろう。
それまでにはココ片付けて、明日までの書類も仕上げねぇとな……

休まずやれば日付が変わるまでには終わるだろう。

「よし‥」

俺は作業に取り掛かった。

◇◇◇

22:00

「はぁ、疲れた〜〜〜」

俺は散らかった部屋と、やるべき書類を片付けて寮の部屋へと帰ってきた。
ベッドの上にボフッと勢いよくダイブする。

「………」

俺は静かに目を閉じた。

疲れて眠いハズなのに、脳内がザワザワしている。
何か作業に没頭していた方が気が紛れて良かったかもしれない。

俺は隣の部屋の壁を静かに見つめた。

「…」


…………


モヤモヤする…。

こんな気持ちは始めてだ。
今まで、ずっと身近にいたのに…。

なんでだ?

一体いつからそうなった?


なんで、

なんでそうなった……?

この気持ちを、どう押さえていいのか自分でもわからない。

ただ、ひどいこといっぱい言ってしまった後悔が今は一番大きい。





だって、普通…………思わねぇだろ…?

悪態ばっかついて、

誰に大しても冷徹で、

意地悪くって…………



「………」


キスしたり、

噛みついたり、

殴り合いの喧嘩したり……



『俺がお前を好きだと言ったら……』


『冗談だ、忘れろ』



見え隠れする本心は、どこにあるんだ…?


………全部、“好き”の裏返しか?

だったとしたら、
不器用にも程があるだろう…………



……………



俺はひたすら壁を見る。


今ならまだ起きているだろう。

話を、するべきだろうか…

だが、何を言えば良い…?




………………


俺は珍しく迷っていた。

今後のことを考えたら、俺も穏便に済ませたい。

じゃなきゃ、生徒会の仕事にも支障がでる。

仕事重視なアイツのことだ。
きっと、『冗談』で無かったことにしてくる可能性は高い。

だが、
もしそうだとしたら、俺はそれに甘えていいのだろうか…?

無かったことにする…

そうすれば、以前のままに戻れる。


俺と、ヒデがいて、そこに啓太もいたら……

俺としては申し分ない。



だけどそれは………


アイツの気持ちも、
無かったことになる……………





ハッキリ答えを出さなくてはいけないのか……?

つーか、

答えってなんだ?

俺がヒデをどう思ってるかなんて…

思ってるかなんて……………



「っ、」


脳裏に啓太の存在が浮かぶ。


「…」

俺は啓太の…
啓太の、中嶋に対する思いも、無駄にしたくない………







その時、俺の中で理想の形がひらめいた。

俺は咄嗟に携帯に手を伸ばした。
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