小説(長編)

□蜂蜜と猛毒B【和×啓前提の中×和】
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―中嶋部屋―

ガチャ

「遠藤、起きているか?お前に客だ」
「……」

突然部屋の扉が開いたかと思ったら、中嶋さんの声がそう告げた。
俺は何の反応も示さずベッドの上でぼーっと窓の外を見ている。

「和希…」
「……」


啓太の声がする。
客と言われ、なんとなく予想はしていたが…
俺は無関心を装う。

なんで今更ここに連れて来たのか、中嶋さんの気が知れない。

どんな魂胆があるのか知らないが、俺には関係ない…

俺は一向に振り向くことはなかった。

何も話すことなんてない。

無言を貫く。


中嶋さんは俺の側に来ると、無理矢理顎を掴んでそちらを向かせようとする。

「ちゃんと顔を見ろ。お前の大好きな伊藤だぞ?」
「……」

俺は中嶋さんの手をパシッと払う。

中嶋さんは深いため息をつく。


「…はぁ、こんな感じだ。ここ最近は口もきかない」
「……」
「お前に会わせれば何かしら反応があると思ったんだが、ムダだったみたいだな」
「……」
「良いのか、遠藤?言いたいことあるんじゃないのか?」
「……」

ないよ、今更…

早く立ち去って欲しい。
1人になりたい…

誰かに関わると面倒くさい…

そっとしておいて欲しい。





「中嶋さん、すみません。2人きりで話をさせてくれませんか」

啓太が静かにそう申し出る。
中嶋さんはしばらく考えていたようだったが、珍しく了承した。

「………。俺は生徒会室に戻る。部屋を荒らすなよ」
「すみません」


パタン…



本当に2人きりにさせるとは思っていなかったので、正直驚いた。
それだけ俺に手を焼いていたということだろうか。

「……和希」
「…」

啓太は俺の側に寄る。

俺は変わらず窓の外をずっと眺めていた。


「…和希、お前の口から、ちゃんと訳が知りたい。話してくれるって、言ったよな?」
「……」

俺は答えない。

「和希、」
「……もう、どうでも…いいんだ…」
「え…」
「どうでもいい…もう疲れた…。何も、考えたくない…」
「……」
「誰とも関わりたくないんだ、もう…出て行って…」
「…」
「…」

2人して無言になる。

静けさが訪れたことで、時計の音だけが奇妙なくらいに大きな音を立てて時を刻む。



「……嫌だって、言ったら?」

啓太の声がそれを打ち消した。


啓太は意外と頑固な一面があることは俺は知っている。
引かない時は本当に引かない。
一貫している。
芯が強いとも言える。

だが今の俺には都合が悪い。

寡黙を通し続けていたら長くなりそうだ…




「…………お前はズルイよな。俺が話したい時、全然聞いてもくれなかったのに」
「……ごめん、っでも!」
「啓太が知りたがっているのは、俺と中嶋さんのこと?」
「それもあるけど…」
「体の付き合いしてるよ」
「…!」

俺は包み隠さず言う……

その方が諦めてくれると思ったから…


また俺に嫌気をさして、

怒って、

罵って、

去って行けばいい……




「初めは嫌だったけど、今じゃなんの抵抗もない」
「……」
「だから…」
「っ…」

啓太の目から涙が零れる。
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