キリリク小説

□心から…【七×啓】
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◇◇◇

「あ〜美味しかったですね!」
「そうですね。ところで伊藤くん、このあと何処か行きたいとこありますか?」
「そうですね……」


ん?

なんだろあれ?
なんか向こうから走ってくる…


「!」

「うわーん!待ってよ〜!!」

「七条さん、あれ…」
「?」

俺が指差した前方より、こちらに向かって薄茶色した一匹の中型犬が全速力で走って来る。
その後方には6歳くらいの男の子が慌てふためきながら追い掛けてくる姿が見えた。

「捕まえなきゃ!」
「え、伊藤くん!?」

俺は近づいてくる犬の引きづるリードを狙って足を踏み出した。


「待て!」


むぎゅ!

しかし、上手く踏むことに成功はしたものの、勢いのままにリードは虚しく俺の足から擦り抜けて犬はそのまま走り去ってしまった。


「ぅわ!ちょ!こら、待てー!!」

俺はよろめき態勢を整えるとそのまま犬を追い掛けて走りだした。

「伊藤くん!?」
「七条さん!すみません俺あの犬捕まえて来ます!!」


振り向いてただそれだけ伝えると、俺はひたすら逃げる犬を追い掛けた。


◇◇◇

だけど、犬の駆け足に人間の足が追い付くわけもなく………


「はぁ、はぁ、はぁ、どこ…行った!?」

俺は等々姿を見失ってしまった。

「はぁ、はぁ、はぁ…」

立ち止まって呼吸を整える。
さすがに食後の運動はきついな…
脇腹に激痛が走る。


「っ…」

額の汗を拭って辺りを見渡す。
それらしいものは見当たらない…


完全に見失ってしまった…



「伊藤くん!」



しばらくして七条さんと男の子が追い掛けてきた。


「はぁ、はぁ、お兄ちゃん!チビは?!」

チビっていうのは先程の飼い犬の名だろう。
チビという程の大きさでもなかった気もするけど…。


「ごめん、見失っちゃった…」
「うぅ〜、ふぇ…っ、」
「あぁ…泣かないで、きっと見つけだしてあげるから」
「うぅ、っ、……ぁ!」
「!?」


泣きべそをかいていた男の子が急に何かを見つけたらしく、指を差しながら飛び上がった。

「あれ!あれ!!」
「え?」
「チビ〜!!」


反対車線の歩道を歩いていたチビを見つけだし、男の子は急に駆け出した。

だがしかし…


「バカ!!そっちに出たら危ない!!!!」

俺は何の考えもなしに道路へ飛び出した男の子を咄嗟に追い掛けた。
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