ショート2

□リアルタイム短編
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「いーんだよ」

カカシが私を抱き締めてくれた。
後ろからすっぽり、ちっぽけな私を包み込む。

「……」

私は何かを、言うことすら出来なくて。
泣くことさえ上手く出来なくて、ただ立ち尽くす。

涙を。

流すには、どうすればいいんだっけ?

心を。

解(ほぐ)す方法が分からない。
ちょっと疲れ過ぎたみたい。


「だいじょーぶだよ。だいじょーぶ」


けれど耳元で繰り返されるゆるい台詞が。
弛緩剤(しかんざい)なあなたの声が。

ぴん、と。

張り詰めた空気を和(やわ)らげて行く。
私を元に戻して行く。

「オレが愛してるかーらさ。オマエは大丈夫」
「…カカシ…」

するとやっと。
絞り出せた掠(かす)れたあなたの名前が。

「ん…」

そっと。
あなたの唇に吸い込まれた。
優しいキス。
すべてを飲み込んでくれるカカシに。
心の中の鉛(なまり)を、私は口移しで委(ゆだ)ねた。


やっぱりしんどいんだよ。
なんだか、つらい。
かかえきれない。


お願い。


たすけて。
ささえて。
あいして。


無言で叫べば頷(うなず)くカカシ。


『わかってーるよ』
『そばにいるよ』
『あいしているよ』


発せられなくても。
形をとらなくても在(あ)る思い。


それに包まれていると。


気付くまで。

どれだけの日々を私は嘆き潰して来たんだろう。

すぐに忘れてしまう、繰り返してしまう悪癖。
その事を。

カカシは何度でも思い出させてくれる。

ユルク。

ココロゴト。

ぎゅっと抱き締めて。


「だいじょーぶだよ」


そして繰り返されるあなたの言葉が。

幾度でも私に頭を上げさせる。
鉛を涙で吐き出した後に、もう一度前を向く力をくれる。


私は。


あなたを愛しているから。
きっと。
世界も自分も愛せる。


だから明日は。


顔を上げて笑うね。

見ていて?
カカシ。
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