ショート2
□リアルタイム短編
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‐こんっ。
窓ガラスに何か当たる音がした。
?
カーテンを開ければそこにはあなた。
シカマルが立っていた。
『さっさと開けろ』
口の動きで読み取るセリフ。
「はいはい」
がらっ、と。
ガラスを開ければ断りもなく入ってくる彼に。
「…任務なんじゃなかったの?」
がらり。
聞きながら私は窓を閉めた。
「予定では、な」
すると。
ぽりぽりとシカマルは頭を掻く。
「って、戻ってきちゃマズかったか?」
「そんな訳…」
否定しかけて中断。
まさか。
今日会えるとは思ってなかったから…
チョコレート、用意して無い。
「…オマエさ?」
「え!?」
と。
潜められる彼のキレイな眉。
少し細めた目に鋭く射抜かれて。
どきっ。
いろんな意味で。
止まりそうになる心臓を、私は右手でおさえた。
「用意してねーんだろ」
「ええっ!?」
ナンデバレタノ!?
焦(あせ)って固まったら。
ぐいっ。
突然。
腕を引かれて。
ぽすっ。
そのまま。
私はあなたの胸にぶつかった。
「シカマル…!?」
暖かいあなたの胸。
私だけの場所。
他のヒトは入り込めない所に、抱き寄せられて。
「オマエってよ、ホント読みがあせぇよな…」
大好きな人の腕の中。
暖かい。
南洋の海みたいな、ゆらゆら揺れる水の中。
そんな艶(なまめ)かしいトコロで。
「…もしかしたらって、考えられねぇのかよ?もし戻れなかったとしても、腐らねぇモン用意しときゃ問題ねーだろうが」
長ーいあなたの説教。
色っぽいエコロケーション。
彼の低音が。
ぐるぐると。
渦(うず)を巻いて、私を呑み込み始めた。
「…聞いてんのかよ?」
愛しさに負けて。
簡単に溶けてしまったノウミソに、シカマルは話し続けるけれど。
「おい?」
もう無駄だってば。
あなたの匂い。
私を支配する物腰。
私をあやす声。
そんな狡(ずる)いものに、思考回路は侵略されて。
その音楽を。
この熱を。
あなたを。
もっともっと。
感じるためには、どうしたらいいのかって。
もっともっと、もっと。
色っぽく。
説教されるためには、どうしたらいいのかって。
ソンナ。
不埒(ふらち)なコトしか。
私には、もう考えられない。
「…用意しといたもの」
だから、まっしろな頭から。
乾いた喉から出たのは、この一言だけ。
でも。
頭の良いあなたなら分かるはず。
今年の。
あなたのチョコレートは私だって。
「クッ…」
案の定。
喉を鳴らして『了解』したシカマルに。
優しく。
焦(じ)らす様に髪をいじる彼に。
「…だから、早く…」
待ちきれなくて、私は催促してしまった。
今すぐに。
その唇で。
キスで。
舌先で。
あなたにしか見せない深淵を探って。
この甘さを確かめて?
…Happy Valentine☆2011.2.14