[小説]刀神─カタナガミ─
□【一】晴天の霹靂
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どうして、
こんな事になってしまったのだろう?
オレには、
まだ早いと思っていたのに…
性急にも程がある。
親父の、いきなりの提案で、
オレは今日から、『道場』を継ぐ事になってしまった。
横暴とも云える、
親父の鶴の一声。
あっという間に決まってしまった、オレの未来…
学校からの帰り道…
オレは、昨夜の悪夢を反芻していた。
「皆、聞いてくれ!
俺は今日で、この道場を、
那由多(ナユタ)に譲る!!」
ズラリと並んだ門下生の前で、
親父は高らかに宣言した。
「明日から道場主は、
この篠村那由多だ。
皆、宜しく頼むぞ!?」
唖然とする門下生達の顔が、
目に焼き付いて離れない。
…そうだろうとも。
中学二年になったばかりのガキが、並み居る師範達を押し退けて、
まさか、
『道場主』になるなんて──
一体、誰が想像しただろう?
当然の様に…
オレには、反論の余地すら与えられなかった。
隠居を決め込んだ親父は、
お袋を連れ、その日の内に、
バカンスに出掛けてしまったからだ。
まったく…
勝手にも程がある。
親父は、
面倒事の一切をオレ一人に押し付けて、意気揚々とハワイへ飛んだ。
後には、
三百年続く剣術道場の厳つい看板と、その名に叶う重責だけが残された。
それがオレへの、
誕生日プレゼントだとでも
云わんばかりに…